どうもです!前回はマーティン・セリグマン氏の「オプティミストはなぜ成功するか」(訳:山村宜子氏、パンローリング株式会社)をテーマに楽観主義とその重要性を学びました。
説明スタイルにより同じ出来事でも受け取り方が異なり、挑戦する原動力となったり、逆に学習性無力感を生んだりすることで、その後の習慣や行動、その結果、個人・組織の成果のみならず健康にまで影響が及ぶことが分かりました。
今回は後天的な楽観主義の活用方法、どのようにすれば楽観主義の恩恵を得られるかという実益的な部分にフォーカスして学んでいきます!
あくまで筆者が紹介するのは楽観主義の活用方法で、「挫折を味わった時にもっと元気が出るような考え方で自分に話しかけるための方法」を身につけるのが目的です。
楽観主義で想起されるかもしれないネガティブな側面、「自信過剰で責任感が無く他責で現実が見えていない奴になれ」ということではないのでご安心ください!
楽観主義を活用すべき場面、悲観主義のメリットも交えながら、もっといい人生になるために楽観主義の恩恵を得るための方法が紹介されます。
落ち込みがちで物事が中々うまく進まない、自分に自信が中々持てず卑下してしまうといった悩みを持つ方に是非身につけてほしいアプローチとなります!
また、元々楽観主義の人は自身の特性を知ることで使いこなし方が上達し、持ち前の都合の良い前向きな解釈を使用するべきかを判断でき、改善につなげるべき結果・失敗を無視せず受け止めることが出来るようなると筆者は主張します。
それでは早速本題に入りましょう!
楽観主義の恩恵を得るためには
楽観主義の恩恵が必要な人
筆者は全ての人がどの状況でも楽観主義であるべきというわけではなく、必要な時に主体的に楽観主義の恩恵を活用できる柔軟な楽観主義者が目指すべき姿であると提唱します。
そして具体的には本書で紹介される特性診断テスト(ASQ, Attributional Style Questionnaire )において非常に楽観的となった人以外もしくは、非常に楽観的でも下記のいずれかの質問の回答が「はい」となる人は楽観主義の恩恵を得るためのアプローチが有効であると筆者は主張します。
- 自分はすぐがっくりするたちだろうか?
- 自分は必要以上に落ち込んでしまうだろうか?
- 自分はこんなに失敗しなくてもいいはずだと思っているか?
楽観主義の恩恵が必要な場面、そうでない場面
次に筆者は楽観主義の考え方が有効な場面として下記を例示します。
- 何かを達成しようといしているとき
- 自分の気持ちを高めよう、落ち込まないようにしているとき
- 困難な状況が長引きそうで、自分の健康状態が問題になっている場合
- 指導的役割を演じたいとき、他の人びとを啓発したいとき
これらの場合では、基本的に失敗が大して被害を生まない場合は、悲観主義の恩恵より楽観主義の恩恵が勝る、もしくは悲観主義による学習性無力感による足踏みのデメリットが大きいため、楽観主義への変身が推奨されます。
逆に生死に繋がる場面、人生を大きく左右する選択するときや下記のような場面では、失敗による代償が大きいため楽観主義はお勧めできません。
- リスクの大きいことを計画する場合、将来の見通しが不確かなときは楽観主義を避ける
- 将来の見込みが発揮しない人にカウンセリングするとき、最初は楽観主義を用いない方がよい
- 他の人達の困りごとに同情的であることを示したい場合は、最初は楽観主義を用いず、信頼関係が出来上がってから楽観主義の使用を検討する
失敗による影響を考えるという、楽観主義を取り入れるべきかを考えるための基本ガイダンスもあるため、楽観主義への変身による暴走に注意することができます。
楽観主義の恩恵を得るためのアプローチ
自分を知る-ABC方式による自身の分析
ではいよいよ、楽観主義の恩恵を得るため、柔軟な楽観主義者となるためのアプローチを見ていきましょう!
まずはじめに必要なステップは自分を知ることです。自分の説明スタイルを把握することで、より良い人生を送るために変える必要がある認識・解釈を特定することができます。
ここで大事なのは日常生活における実際の説明スタイルを把握することで、そのための振り返り方法としてABC方式が紹介されます。
これは日常で起きた出来事をA:困った状況(Adversity)、B:思い込み(Belief)、C:結果(Consequence)に分けて整理することで、発生した出来事(A)に対してどのように認識・解釈・自己説明(B)をしており、それによりどのような行動に繋がったかという結果(C)の把握が期待できます。
私たちは困った状況(Adversity)に直面すると、それについて考えをめぐらす。考えはすぐに思い込み(Belief)となって固まる。この思い込みはあまりに習慣的になっていて自分では気づかないことも多い。思い込みは結果(Consequence)を生む。どのような思い込みをするかで、落胆してあきらめるか、または満足して建設的な行動が取れるかが決まる。
マーティン・セリグマン オプティミストはなぜ成功するのか?p281
例えば「配偶者とけんか」という同じ出来事(A)でも、思い込み(B)が「私はなにをやってもダメ」と思う人と、「あの人は危険が悪かったんだ」と思う人、「誤解を解ければ大丈夫」と思う人では、仲直りのための行動を取るまでの期間も変わるので、けんかを引きずるか、そしてそれによる人生の幸福度も変わるでしょう。
逆に挫折したままで状況を改善できずに置していれば、更なる悪い出来事を呼び込んでしまうでしょう・・・。
このABC方式を実践するために筆者は、5ケースたまるまでABCを書き出す日記を1,2日つけることを提案します。注意点としては下記の通りです。
- 困った状況:起こったことを自分の評価を交えずに記録する(ここで思い込みが入らないように注意)
- 思い込み:困った状況をどう解釈するか。感情は一緒にしないように注意し結果の欄に記載する
- 結果:自分の感情と行動を書き込む。気づいたことは全て記録する。気力が無かったことや計画を立てたこともここに入る。
記録した結果を見返すことで自分の思い込みがどのように結果に影響をしているかを視覚化することができます。困った状況に浮かぶ思い込みの習慣を変えることが出来れば、行動や習慣の改善も期待できます。
悲観的な思い込みへの対処
自分の悲観的な思い込みに気づいたら、次は対処方法を学びましょう!筆者は自分の思い込みから気を反らす、もしくは反論することを紹介します。
勿論思い込みの習慣を変えられる反論の方が長期的に有効となります。しかし、気力が限られるときなど、応急措置的な対処だからこそ役立つ場面もあり、両方を知って使い分けることが推奨されます。
気を反らす:思い込みの無限ループから脱出する
まずは悲劇的な思い込みから気を反らすアプローチです。悲劇的な思い込みに囚われると気持ちが落ち込み、立ち直りが遅くなります。
落ち込み中は状況の改善ができないことに加え、人の反芻する習慣によりさらに悲劇的な思い込みをしやすく、悲劇的思い込みの無限ループに陥る危険性があります。
この状況が続くと学習性無力感に繋がり、自分はダメだという悲劇的な思い込みも強化されるので、悲劇的思い込みの反芻が継続する過程が習慣化してしまいます。
そんな状況や負のループを回避するために役立つのが気を反らすアプローチです!
しかし、ある物事を考えないようにすればするほど頭から離れないという経験は皆さまにもあるのではないでしょうか?
ご安心ください!筆者は関心を他の対象に移す能力は誰でも持っていると主張し、下記の方法を紹介します。
- 肉体的手法:立ち上がって手のひらを壁に打ち付けて「ストップ」と叫ぶ、大きな鈴を鳴らす、ストップと赤字で大きく書いた紙を見る
- 関心を別の物に移す(反芻から脱出後また戻ってしまうのを防ぐ):何か小さなものをじっくり観察する、周囲の音に意識を向ける、匂いや味に集中する
- 反芻する時間を決める:悲劇について考える時間を決める、書き留めるとより脳から切り離しやすく状況の整理により悲劇的な思い込みの回避にも繋がる
いずれも単純な方法に思えますが、その効果は絶大であり、多くの人が上記の方法で負のループから脱出していると筆者は説明します。
何かを考えないようにするのは難しいですが、意識を別のものに移すのであれば難易度が低いという人間の習性を鑑みたアプローチですね。また、マインドフルネス的視点で言えば、自分の呼吸に集中するのも関心を別の物に移すアプローチとなるでしょう。
反論する:思い込みの習慣を変える
気を反らすのは応急処置として有効ですが、根本的な解決にはなりません。
悲劇的な思い込みを減らし、落胆とあきらめの反応という習慣をエネルギッシュな反応に変えるためのアプローチとして筆者は自分の思い込みに反論することを提唱します。
自分の悲劇的な思い込みに正しく反論できれば、絶望を希望に変えることができ、繰り返すことで悲劇的な思い込みの習慣から徐々に脱却できます。それでは反論するためのステップを見ていきましょう!
距離を取る
自身の考えに反論するには、何が思い込みであるかを冷静かつ客観的に確認する必要があり、そのためには自分の思い込みと距離を取ることが重要になります。
思い込みに囚われた状況では、どこからどこまで事実でどこからが思い込みかの判断もつかず、反論のスタートラインにも立てないでしょう。
そのためには上記の気を反らす方法を使って頭を切り替えたり、時間を置いたり、ABC法を使って自分の状況を書き出してみるのも有効でしょう。
自身が自分の信念に冷静に向き合える状況を整えるのが第一のステップとなります。
「はい、ここからは反論タイム」と手を鳴らしながら呟くだけでも、悲劇的な思い込みから抜け出し客観的に自分の状態を考える準備となるでしょう。
自分と議論する
自分の信念と向き合える状況が整えば、いよいよ自分との議論する段階となります。相手は自分という特殊な状況ですが、筆者は注意するべき点は下記の通りと通常と同様であると紹介します。
- 証拠はあるか:人は事実より過剰に悲劇的に反応してしまうことが多いが、事実は大抵それほどひどくありません。その傾向に気づくために有効なのが「この思い込みの根拠となっている証拠はなんだろう?」という問いで、思い込みが誤りである、もしくは少なくとも事実ではないことに気づくきっかけとなります。
- 別の考え方はできるか:何事も原因が一つだけであることは少ないです。自分に悲劇的な理由に固執せず様々な理由を考え、そこから自分の努力で変えられる(準備不足)、特定の(今回は特に難しい状況であった)、自分の責任でない(相手の機嫌が悪かった)理由に焦点を当ててみましょう。自分の悲劇的な信念に固執せず自滅的な習慣を捨てることで、頭を切り替える方法が身につきます。
- 思い込みが本当だった場合の持つ意味:検証の結果思い込みが事実である場合もあります。その場合はそれが事実であった時の影響を冷静に考えてみましょう。本当に破滅的な影響を持っているのか?よく考えるとそれほど影響力がないことに気づければ落ち込みから立ち上がりやすくなります。
- その考え方は有効か:世の中にはいくら考えてもどうしようもない問題があります。世界は真の平和と平等に程遠く、それが事実だったとして悲しみに暮れていても、状況は何も変わりません。目の前のやるべきことに集中した方が有効な場合もあり、このような時は気を反らすアプローチが有効となります。自分が考えることで何かを変えることができるか、どうしたら変えることができるか方法を列挙することで、自分の考え方の方向性が正しく建設的か見直せます。
反論の記録をつける
議論ができたら、ABCDE法に従いその記録をつけることを筆者は提案します。
ABCは先ほどまでと同じですが、Dは反論(disputation), Eは元気づけ(energization)を意味します。
これらを記録することで自分にどんな思い込みがあるかを確認するのみでなく、どんな反論をしてどう元気づければ上手くいったかを振り返るのに役立ちます。
自分の思考パターンには傾向があるので、上手くいった方法を振り返ることで、今後のケースでよりうまく対応できるようになるでしょう。
私自身の練習と皆様への例示を兼ねて一つ実際にやってみようと思います!(例示で素直に本当の悩みを出すのはちょっと恥ずかしいですが笑)
- A(困った状況):次のポストの話が中々実現しない
- B(思い込み):会社は私を評価していない?それとも自身の能力が実際に不足している?
- C(結論):いままで意欲的に取り組んでいた仕事が評価されない無駄なものに感じ、仕事のモチベーションが下がる。新しいことに挑戦するのに尻込みする。
- D(反論):新しい案件が中々来ず、まずポスト自体が無いという話を聞く。これは私の能力や会社の評価に関係ない。これまでの取り組みは会社からの評価は不明瞭であるが、周囲の人から評価や応援をもらうことがあり、無駄なはずがない。
- E(元気づけ):新しいことへの挑戦は毎回視野の広がりやスキルの成長を実感できる。次のポストがまだ来ないのであれば、それまでに能力を伸ばすチャンスであり、積極的に挑戦しよう。
実際に取り組んでみるとどこが思い込みで事実かを区別でき心の重荷が取れる気がします。さらに元気づけの段階で今後どうしようかという方針も決まるので前向きな気持ちを得られました!
仕事における楽観主義の活用
筆者は複数の視点で会社や仕事にも楽観主義は有効活用できると主張します。ここでは主に2つの視点を紹介させていただきます!
仕事の壁を克服する
一言で仕事と言っても様々な業務が含まれており、中には心の重荷になるような苦手な場面があるかもしれません。
苦手な場面の影響度が大きい場合、自分が関心の強い業界の仕事に就いていたとしても、自分の能力を活かすためのエネルギーが消耗されてしまい無力状態になり、自身の活躍の幅を狭める原因となるでしょう。
そして、自分の説明スタイルや思い込みがこの苦手意識を強化している可能性があります。
逆に言えば、思い込みから解放されて自分にとって苦手な場面を克服できれば、長期的な目線で職場のストレスを減らしエネルギーの浪費を回避できるので、得意・好きなことへエネルギッシュに活動しやすくなるでしょう。
結果、楽観主義の活用による思い込みの習慣の改善は、仕事の壁の克服に繋がるのです。
更に、仕事の環境は困ったことが(私見では)起こりやすいので、ABCDE方式を練習して楽観主義の考え方を身につけるのに絶好の機会という見方もできるでしょう。
適切な配置・キャリアを考える
また、楽観主義の度合いに着目することで、その人の特性を活かした適切な配置に繋がります。配置により求められる仕事は様々であるため、一つの仕事で苦労しても、別の仕事では特性がマッチして大きな成果をあげられる可能性があります。
さらに自分のキャリアを考える際に自身の楽観度を参考に選択肢を検討したり、求められるポジションにより楽観度を使うタイミングを判断できます。
職種の中でも楽観主義の習慣が強く求められる業界が存在し、筆者は下記を例示します。断られたり評価・プレッシャーを受けたりするのが前提の仕事の中での挑戦が求められる職業が多い印象でしょうか。
- セールス
- 仲買業
- 広報
- 俳優など人前に出る仕事
- 寄付金を募る仕事
- 創造的な仕事
- 競争の激しい仕事
- 燃え尽きる率の高い仕事
一方で悲観主義が重宝される職業もあります。悲観主義のメリットは物事を慎重に見極め現実を正確に見る力です。
考えすぎにより無力感を生むような悲観的思い込みにはまるのは回避しなくてはいないですが、適度な悲観主義は仕事でも役立つ必要な特性となります。
具体的にはプレッシャーの少ない環境で専門的な技術が求められ、攻めるリスク・タイミングを適切に評価する必要があり慎重さが求められる下記のような職業が紹介されます。
- 設計・安全工学
- 技術・コスト見積もり
- 契約交渉
- 財政統制・会計
- 法律(訴訟を除く)
- 経営管理
- 統計
- テクニカルライティング
- 品質管理
- 人事・渉外管理
上記のように極度の悲観主義でない限りは適切なポジションは存在します。そのため楽観主義の人のみを採用すればいいという単純なものではなく、ポジションに応じて適切な特性を持つ人を採用する、相手の楽観度にあわせて適切なポジションへ配置するというアプローチを筆者は提案します。
柔軟な楽観主義-バランスを取り悲観主義のメリットも生かす
筆者は最終章で楽観主義には人生を良くするポジティブな側面がある一方、現実を都合良く解釈したり、責任を逃れる口実となるデメリットもあると語ります。
このデメリットと、前述の悲観主義の現実認知性の高さというメリットも考慮し、100%の楽観主義というのにも弊害があることが分かります。
筆者が本書で示す目指す姿は、柔軟な楽観主義であり、現実的な評価が必要な時は悲観主義を、挑戦を前向きな方向へ後押ししたい時、挫折から立ち直る必要がある時は楽観主義といったように、必要な場面に応じて適した考え方を使いこなすことです。
楽観主義を学ぶことにより、自分の定めた目標を達成するのに都合の良い道具を選択できるようになるイメージであると筆者は説明します。
終わりに
以上、マーティン・セリグマン氏の「オプティミストはなぜ成功するか」から楽観主義の恩恵を得るための具体的なアプローチを学びました。
ここ1,2年間何かをやり遂げても達成感や次の挑戦へのモチベーションが上がらなかったのですが、本書を読んでその理由が自分の説明パターンにある可能性に気づけました。本書内の診断で成功に対して悲観的な説明スタイルを取っていることが分かったのです。
「成功したら”窓”(環境の理由を探して感謝かつ再現性を検討する)を見る。失敗したら”鏡”(他責せず自分の改善点を探す)を見る」の習慣化を目指していた弊害であったかもしれないなと感じています。色々改善に繋がっているのですが、ちょっと最近燃え尽き気味・・・。
本書で紹介された悲観的な思い込みを否定し、楽観主義の恩恵を得るためのノウハウを習慣化し、前向きでエネルギッシュな日々を取り戻し、人生の可能性の拡大を目指していこうと感じる一冊でした。
筆者の楽観主義に関する書籍はシリーズ化しているので、ぜひそちらも時間を作って読みたいと感じました!
それではまた次の記事で!