「人見知りな自分にもう悩まない?」内向型人間の時代-読書日記2/2

桜も散り夏の気候が見え隠れする日々となりましたね。ゴールデンウイークも迫っておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

前回に引き続き、スーザン・ケイン氏「Quiet-内向型人間の時代」(訳:古草秀子氏、講談社)についての読書日記を整理します!前回は内向型外向型という性向を生む「刺激への反応の違い」と、その違いを生む脳の構造、そしてそれぞれの長所を整理しました。

基本的に外向型の特徴を理想として社会は作られています。活発な活動積極的な発言広い交友関係価値あるものと評価され、その対極にある慎重さ寡黙さ1人の時間が好ましいものと評価されることはあまりありません。慎重さリスク回避に役立ち1人の時間は集中力を高めて創造的な活動に繋がるというポジティブな側面があるのにかかわらずです。

この外部からの評価に対し、「内向型」の人が元々の自分の性質(気質)を無視して無理に外向型のように振舞おうとすると、大きなストレスを生むのみでなく本来持つ長所とスキル、個性を失う危険性があります。

今回は「内向型」の人が潜在能力を発揮するために無理のない範囲でどう立ち振る舞えるかに着目して、本書で学んだ興味深かった点実際の行動に移すためのヒントを整理していきたいと思います。

一番印象に残ったポイント:コア・パーソナル・プロジェクトを持つ重要性

コア・パーソナル・プロジェクトの持つ力

コア・パーソナル・プロジェクトとは?

内向型の人がその力を発揮するためにはコア・パーソナル・プロジェクトを持つことが重要であるという点が最も印象に残りました。コア・パーソナル・プロジェクトその力について筆者は下記の通り主張します。

自分にとって非常に重要な事柄、すなわち「コア・パーソナル・プロジェクト」に従事するとき、その特性の枠を超えてふるまえるのであり、実際にふるまえるのだ。

Quiet-内向型人間の時代  外向的にふるまったほうがいいとき p263

振る舞いの使い分けにより自分の潜在能力を最大に活かす

内向型の人が潜在能力を発揮するためには、外向型の振る舞いが時に求められます。内向型、外向型の性向は共に相手を補完する優れた力を持つためです。片方だけの発揮では活躍できる場は限られ、その人の可能性を広げにくくなります。

内向型の人がその集中力と創造性を活かしていかに優れたアイディアを生み出しても、それが本人の頭の中に閉まったままでは絵に描いた餅となり意味を持ちません。アイディアを実現させて有用なものへ変えるためには、情報の発信他者との協力が重要な要素となります。

発信力を高めたり、人間関係を広げたり、初対面の人と関係を築いたりする時、外向型の振る舞いが非常に有効となり、内向型の持つ力をより強く広く発揮させて人生の可能性を広げます。

しかし本来の自分と異なる振る舞いをするには多くのエネルギーが必要です。あらゆる場面で異なる自分を演じ続けることは、エネルギーを枯渇させ燃え尽き状態を生んでしまいます。そのような失敗が重なると、苦手意識がますます強くなり挑戦への抵抗が大きくなるという負の循環に繋がってしまいます。

コア・パーソナル・プロジェクトの力

自分の枠を超えて能力をより発揮するための力となるのが、コア・パーソナル・プロジェクトです。コア・パーソナル・プロジェクトとは重要と感じ、活動への意欲をもたらす人生における自主的な課題です。

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コア・パーソナル・プロジェクトは人に与えられたものではなく自分の内的な動機から生み出された課題です。自由をより有意義に活用して人生を充実させるための要素として、「自由からの逃走」で重要視された自発的な活動ともリンクしますね!

コア・パーソナル・プロジェクトの実例

本書内では内向型についても研究される心理学者のブライアン・リトル氏の例が紹介されます。リトル氏もTEDにトークがありますので、ご興味ある方は是非ご覧ください!

ユーモアたっぷりに講演するリトル氏は一見外向型のように見えますが、講演後に一人になり回復できる場所を探してトイレの個室にこもるほどの内向型です。本来の彼の気質を飛び越え、外向型のように振舞う力を与えるのがコア・パーソナル・プロジェクトなのです。

彼はコア・パーソナル・プロジェクトについて下記の通り説明します。

リトルによれば、内容が重要であり、自分の能力に適し、過度のストレスがかからず、他人の助力を受けられるようなコア・パーソナル・プロジェクトにかかわるとき、私たちの人生は大きく高められる。

Quiet-内向型人間の時代  外向的にふるまったほうがいいとき p263-264

学生を愛するリトル氏にとってのコア・パーソナル・プロジェクトは、学生の心を開き、かれらに幸福をもたらすことであり、そのためであれば、講演で、本来の自分の気質を超えた振る舞いが可能となります。

コア・パーソナル・プロジェクトが示す道しるべ

本来の自分の性質と異なる振る舞いは自分の人格の否定に繋がる危険性もありますが、自発的なコア・パーソナル・プロジェクトのための行動は例外です。自分にとっての重要な目的のための行動となるため、自分の人格に対する裏切りとはなりません。

コア・パーソナル・プロジェクトの存在は、自分の気質を超えた振る舞いエネルギーを与え自分の新たな可能性を広げるための原動力となります。

コア・パーソナル・プロジェクトが挑戦への力を与え、人生の可能性を広げる

そのため、コア・パーソナル・プロジェクトは、内向型の人にとっていつ外向的にふるまった方がいいかを示す道しるべとなります。無理な振る舞いの連続で日々に疲労を感じている人は、どこでエネルギーを節約し、どこにエネルギーを集中するべきか選択するための基準となります。

逆にコア・パーソナル・プロジェクトが無いと、自分に取ってあまり重要でない人付き合いや、自分の個性の否定に繋がる振る舞いにエネルギーを浪費する危険性が増えます。

コア・パーソナル・プロジェクトは振る舞いを変えるエネルギーとなるのみでなく、日々の中での振る舞いをどうするかを示す道しるべとなります。自分が何をするべきかという自主的な人生の課題を持つことは、内向型の特性を生かしながらも無理なく生きていく上で重要であることを本書で学びました。

行動に移すためには?

「コア・パーソナル・プロジェクトが重要というのはわかったけど、コア・パーソナル・プロジェクトを見つけるにはどうすればいいの?」というのは非常に難しく重要な課題です。人によってコア・パーソナル・プロジェクトは大きく異なるためです。また、内的な動機に基づくことも重要であるため、最終的には自分で見つけ出す必要があります。

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内向型の人は周りの意見にあわせて自分の意見を無視するのに慣れてしまっているため、見つけるのが困難な場合があると筆者は指摘します。

本書では探し方のヒントとして下記3つのステップを紹介します。

  • 子供の頃に大好きだったことを思い返す。
  • 自分がどんな仕事に興味を持っているか考える。
  • 自分がなにをうらやましいと感じるか注意する

子供の頃の夢自分が本心でやりたいことを反映している可能性があります。やりたいことそのものというよりは、その職業のどのような点に憧れていたかがポイントとなります。消防士という例では、人を助ける善人になりたかったのか、ヒーローに憧れていたのか、消防車の運転に興味があるのか、その根底にヒントが隠されている可能性があります。

また仕事の中でどの役割にやりがいや居心地の良さを感じるかが、自分の気質を超えて挑戦しようとすることは何なのかを探すヒントになります。この現在に目を向けるステップは実際の能力や気質を反映した現実的な判断材料になります。

そして最後のステップは現在から未来に目を向けたステップとなります。嫉妬は負の感情としてとらえられがちですが。嫉妬も自分の本音を反映している可能性が高いです。周りから与えられた建前の目標ではなく、自発的な目標を見つけるために自分の本音と向き合うのは重要なステップとなります。

面白いと感じた点: 回復のための場所を探す重要性

人によって居心地の良い回復のための場所は異なる

回復のための場所とは下記の通り説明され、自分の人格を健全に保つために必要な場所を指します。

リトル教授の造語で、本当の自己に戻りたいときに行く場所のことだ。

Quiet-内向型人間の時代  外向的にふるまったほうがいいとき p276

前回の記事で記載した通り、内向型外向型の人では脳の扁桃体の働きの違いにより、刺激による反応が異なります。そのため同じ場所でも人によって居心地の良さが変わります。

内向型の人は刺激に強く反応するため、人が多くにぎやかな場所では刺激が過剰となり緊張状態となるため、エネルギーを消耗してしまいます。一人もしくは少人数での静かな時間を好み、そこが自分を回復するための場所となります。

一方で外向型の人は刺激の多い場所を居心地よく感じるため、刺激の少ない静かな場所や状況では物足りなさや孤独を強く感じます。人との活発な交流エネルギーの補充のために必要な場所となります。

自分の人格を健全に保つためには、回復できる場所で過ごす時間の確保が重要です。自己とエネルギーの十分な回復は、自分の気質を超えた振る舞いのためにも必要となります。エネルギーが枯渇していると自分の気質を超えた振る舞いは上手くできません。

行動に移すためには?

活動と気持ちの関連性の傾向を見る

自分にとって居心地の良い場所を探すためには、疲労度や充実感という観点自分の気持ちがどう動くかをモニタリングする期間が必要と考えます。どのような活動で疲労がたまりやすく、どのような活動で充実感を得られたか。活動と気持ちの揺れ動きの関係性の傾向を探れます。

活動と気持ちの変動の関係性を整理する

本書でも自分の状態や周りへの印象をモニタリングするセルフモニタリングの重要性が主張されています。

例えば、私は内向型寄りなので、ディスカッションしながらの情報の整理や、オフィスで仕事をしている際に頻繁にチャットや話しかけられると強い疲労感を覚えます。

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雑談は好きなのですが、仕事をしながらの雑談はどれにも集中できなくなるのでどうにも苦手です・・・。

前者は自分の案を出来るだけ事前に整理しておき脳の負荷を少なくする、後者は誰も仕事をしていない時間や場所を選んで仕事をする時間を作ることで、心の平穏を保っています。

「自由特性協定」を結ぶ

そうはいっても人間は社会的な生き物であり、全ての時間の過ごし方を自分の思い通りに出来るわけではありません。家族や会社、友人との付き合いの中で、またコア・パーソナル・プロジェクトの達成のために、自分の性格に背いた立ち振る舞い居心地の良い場所を離れることを求められることもあるでしょう。

そのような活動の中で自分を保つための方法の一つとして筆者が提案した「自由特性協定」です。自由特性協定について筆者は下記の通り説明します。

自由特性協定とは、私たちはみな、自分の性格にそむいて演技することがあるが、そのかわりに、残りの時間は自分自身でいられるということだ。具体的な例をあげれば、毎週土曜日の夜に外出して楽しみたい妻と、暖炉のそばでゆっくりしたい夫がスケジュールを相談することだ。

Quiet-内向型人間の時代  外向的にふるまったほうがいいとき p278-279

特性について共有建設的に交渉することで、特性が異なる相手とも両者が回復のための十分な時間を確保するための妥協点を見つけられます。お互いの特性の理解コミュニケーション・ギャップを乗り越えるためのカギとなります。

仕事ではこの交渉は一筋縄とはいきませんが、回復のための場所を持つメリットを強調することで間接的に交渉出来る可能性はあります。内向型の人では一人の時間を確保することで仕事の質を上げられる、外向型の人では交流を活性化することで雰囲気を改善できるなどが考えられるでしょうか。

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仕事への貢献の方法は様々です。自分の特性との乖離が激しい場合は、役割や関わるプロセスを変えることも有効な選択肢でしょう!

「自由特性協定」を結ぶべき最も大事な相手

しかし「自由特性協定」を結ぶべき相手は他者に限りません。最も大事な相手は自分自身であることを筆者は主張します。

方法は単純で、いつもと違う時間の過ごし方へ挑戦する時に頻度や時間を目標として決めておきます。そしてそれ以外の時間は回復のための場所で過ごすことを許容します。

挑戦をする上で一番怖いのは頑張りすぎて燃え尽き自分の個性も失われてしまうことです。元々持っていた良さを失ってしまうことは避けたいですよね。その頑張りすぎのブレーキとなるのが自分との自由特性協定です。

目標を決めることで、どこまで頑張ればいいかのラインを引くことができます。そしてそれ以外の時間を自分らしく過ごすことを自己許容できるようになります。

頑張っている中で休憩・回復する時間を設けようとするのは、たとえ必要な時間であってもサボっているような罪悪感を覚えてしまう人もいるでしょう。この罪悪感自分の回復するための時間を奪う危険性があります。

自分が回復するための時間を確保することを許してあげるために、「自由特性協定」を自分と結ぶことが有用な手段となります。いつまで頑張るべきかという短期的なゴールも明確にできるため、その時間に注力しやすくなるという効果も期待できます。

自分に取って負荷が掛かるけれど大事な場面は何なのかを特定し、その場にエネルギーを集中できるように適切に充電することが、自分の気質を超えて自身の可能性を広げるために重要となります。

その他で面白いと感じた点: 内向型が持つリーダーの素質

リーダーと聞くとどうしても活動的で発言力が強く交友関係の広い外向型のイメージがありました。そのため内向型が優れたリーダーの素質を持つという点は興味深かったです。本書ではガンジーをはじめとした内向型のリーダーの実例を示しながら、内向型のリーダーが持つ謙虚で静かなる粘り強さを紹介しています。

また内向型のリーダー謙虚さ傾聴の姿勢により外向型のメンバーの力を引き出し外向型のリーダー発言力積極性内向型のメンバーに道を示すことで、それぞれチームの力を強める相乗効果があることを示唆する研究結果が紹介されています。

理想は必要な時に応じて自分の振る舞いを完全にコントロールすることですが、脳の構造を含めたうまれながらの気質が影響するため、コントロールには限界があります。そのため内向型と外向型の人が互いの強みと弱みを補完し合うチーム現実的で最も理想的な状態となります。

効率的な協働のためには、性格を構成する1つの要素である「内向型」と「外向型」という特性を理解し、それぞれの利点や苦手なこと、人付き合いや問題解決へのアプローチの仕方が異なることを把握し、互いに許容しあうことが必要です。

本書は「内向型」と「外向型」という特性の違いによるコミュニケーション・ギャップを乗り越えるための方法を考える上でも参考となる一冊です。

おわりに

前回からの繰り返しとなりますが、内向型と外向型というのは人の性格を決める一つの要素に過ぎません人により度合も異なるため、こだわりすぎに注意が必要です。内向型と外向型というグループに人を分けれたとしても、それぞれで振る舞いは異なります。

1つの基準による単純な分類は分かりやすく魅力的に感じますが、それにとらわれ他人との関係や自他の可能性を狭めてしまわないように注意が必要です。「内向型」と「外向型」という基準を前面に出して周囲の人や出来事を分類しようとする状態は危険です。

本書の内容は上手くいかない問題がある時に、解決する糸口として検討するという活用方法が丁度良いと考えております。自分の理想通りの立ち振る舞いができずにもやもやしていないか、周囲の人に合わせることに疲労や消耗を感じていないかなど、「ありのまま自分でいることができるか」が問題がないかを確認するための判断基準となります。

上記の注意点に気を付ければ、本書は多くの人に参考になる一冊となります。世界の1/3-2/3の人は内向型といわれ、このうち多くの人が外向型を理想とする社会で生きています。本来の自分を捨てた振る舞いを求められ疲弊していたり、本来の自分の持つ力を発揮できないことに、多かれ少なかれ悩む方は少なくないでしょう。

また外向型の人にとっても内向型の人との付き合い方の改善外向型の潜在能力を発揮するためのヒントを得られます。

自分の特性を理解することの重要性潜在能力を発揮するための方法を学び、自分の人生の可能性を広げるきっかけを得られる一冊となります!

それではまた次の記事で!

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