ハーバードビジネスレビューのレビュー-AIの世界で求められること 3/4

ダイヤモンド社のHarvard Business Review(HBR) 9月号 についてのレビュー後編です。前回からはAIの苦手なことをかんがえることで、どのようなスキルが今後重宝されるかについて考えています。

前回取り扱ったスキルは問題発掘能力と目的を考えてAIを活用する能力でした。

今回は別の視点でどのようなスキルが今後必要とされるかを引き続き考えていきましょう!

新しい環境に対応する

AIは莫大な蓄積した情報を元に最適解を導くことが得意です。

逆にいうと、これまでのデータが使用できない環境では、その力を発揮できないどころか無力化してしまいます。

相手のキングを先に取れば勝ちというルールでのデータを集めたAIが、相手のナイト2つを先に取る必要があるルールへ変わった時には無力になるのは当然です。

また、環境の変化という点では、盤面がチェスから将棋に変わったとすると、これまでのデータが全く使えない状況となってしまいます。

直近の分かりやすい例としてはCOVID-19の出現があります。

コロナの発生前と後では人の行動パターンは大きく変化され、求められる答えは大きく変わりました。

新型コロナウィルス感染症を受けて、顧客の行動が大きく変化している。新型コロナ前のデータは、使えないと言っても言いすぎではないほどだ。

永田 洋幸氏、今村 修一郎氏
AIを小売・流通の現場に実装する方法,  Harvard Business Review9月号

根本的な変化にはまだまだ弱い現代AI

勿論、新しい環境でデータを集めれば再度力を取り戻すことが出来ますが、適応までにタイムラグが発生します。

これが影響の少ないものであればよいですが、医療や自動運転等の命にかかわるものであったり、大規模の投資による失敗では取り返しのつかないエラーとなります。

これが、現状AIのみでの運用が難しいと考えられる理由の1つであり、使用者はこのリスクを考慮しながらAIを使用する必要があります。

また、COVID-19レベルの大きな変化に対しては、新しい環境に対応した新しい答えをAIに掲示する必要があります。

この答えを提供するのに必要なスキルはまさに、前回記載したあるべき姿目的を考えてAIを活用する能力となります。

人に求められるスキル3: 変化に柔軟に対応する

人間に求められる能力としては、未曾有の変化が起きた際も、新しい環境での答えを定義して順応していく力です。

手順書等のこれまでのやり方をそのまま踏襲するのみでは、AIに対する差別化が難しくなってきます。

環境変化に対して適切に情報を収集して、世界、社会、コミュニティ、個人にとってのバランスを考えながら理想の状態を考えて、協議することが求められます。


これは中々ハードルが高いですね;それぞれのスキルが私にとって苦手な分野なので、意識的に訓練と実践を習慣に取り入れてかないと感じています。どのようなスキルが必要かを自分で考えて磨く習慣がある人とそうでない人の間で労働価値の格差はますます拡大していくと予想できます。
人間の本能と現代社会との乖離

人間は本能的に安定を求める生き物です。食べ物を求めての移住を続けるリスクと変化の大きい生活から、農業等を軸とした定住生活を選択して発展してきました。

変化によりストレスが引き起こされたり都合の悪い変化に目を背けたくなる脳の働きやバイアスがあります。

19世紀ごろまでの人間社会では、それでも大きな問題はありませんでした。生まれてから仕事や場所が決まっており、転職や引っ越しも珍しい時代であったためです。

しかし、変化のスピードが加速した現代では、自分が生まれてから死ぬまでの間に大きく生活に影響を与える様々な変化が起こります。

そのため、時代の変化という波に飲まれて難破せずに、自由に自分らしく生きていくためには、適切な情報収集と行動変化が必要です

目の前の仕事や身の回りの環境、もしくはテレビ等による受動的な情報のみでなく、主体的に情報を取りに行く習慣がとても重要となるのです。


情報があふれる今の世界で情報リテラシーの重要性は高まっていますね。でも非常に難しい・・・。必要な最新情報をどうやって日常的に入手することができるのか、そもそもどのような情報が必要となるのか課題が多い現状です・・・。

一方、これまでのデータが活用可能な範囲での変化への対応スピードについてはAIが強みを持つ点となります。

また、AIを変化の検知のために活用することも可能です。AIの特性を理解して、リスクと活用方法を考えることが重要となります。

データをリアルタイムで集め、それをAIで分析し、顧客の生活を改善できるようになった。消費者一人ひとりの意見を聞くことができないからこそ、データでこうした変化を見定める必要がある。

永田 洋幸氏、今村 修一郎氏
AIを小売り・流通の現場に実装する方法,  Harvard Business Review9月号
変化に事前を予想する

AIは答えを出すときに過去、現在のデータを参照します。そのため、未来を想像して、まだ起きていない環境への答えを出すことは出来ません。

しかし、ここを必要なスキルとしなかったのは、人間の能力にも限界があるためです。

COVID-19を例にとっても、2019年まではこのような世界を想像できた人は誰もいないと思います。

想定外の変化が起きても致命傷を回避するために、リスクが分散された柔軟な体制を作るというのが現実的な範囲でしょう。

例えば、大きな影響が発生する意思決定にはストッパーを用意する1つの要素に依存しない多面的な視点を取り入れる等が考えられます。

人に求められるスキル4:データマネジメント能力

また、AIを活用するという視点で必要な能力を考えてみましょう。

ここで重要な能力の1つはデータを適切に取り扱う能力です。

AIが適切にデータを処理してくれても元々の設定や、出された答えの読み取り、活用が誤っていれば意味がありません。必要な考えるポイントは主に下記が考えられます。

  1. どのようなデータを収集できるか
  2. どのようなデータが目的のために必要か
  3. 現在集めているデータは目的達成のために十分であるか
  4. AIが算出した結果を適切に活用できているか
  5. 活用の範囲を広げるときに、集積されたデータをそのまま活用可能か
  6. 変化によるリスクを管理するため、継続的に監視する体制を構築する

4,5番目を少し深堀すると、まず4番目について、仮説ありきで、都合のいい結果のみを抽出してしまうと、AIの活用効果を薄めてしまいます。

莫大なデータ処理により、人間が気づけないような相関関係、因果関係を見つけることもAIを活用するメリットとなりますが、先入観が強すぎると、人間の想像の答えあわせという効果が少ない活用となってしまいます。

AIの導入時には、AIの能力を活用できるように組織の仕組みも変化させる必要があります。

あるホテルチェーン(中略)のマネージャーたちは、さまざまなタイプの客室に関して1時間ごとに需要予測を更新できるAIがあるにもかかわらず、週に1度の会議でロケーションごとに価格を調整していた。同社の意思決定プロセスは、旧式の予約システムの頃から変わっていなかったのである。

エバ・アスカルザ氏, マイケル・ロス氏, ブルース.G.Sハーディ氏, 飯野 由美子氏訳
AIへの投資を利益につなげる方法,  Harvard Business Review9月号

また、算出された結果を鵜呑みにすることにも注意が必要です。機械学習の演算処理プロセスは外から見えないという特徴があります。

そのため、結果が本当に正しいのか、相関関係と因果関係を混同していないか、エラー値によるものでないか等の検証が必要となります。

5番目として、AIは自分で活躍する場所を選べません。そのため、適切に活躍する場所を人が決定する必要があります。

これまでの記載では時間軸での変化を考えてきましたが、場所やデータ集団という面での変化にも注意が必要です。

AIの仕組みを流用する場合は、その参照したデータが、対象のデータと一貫性があるかという点にも注意が必要となります。

環境変化のリスクの具体例としては下記が紹介されています。

機械学習が稼働する環境自体が、アルゴリズムの開発時に想定した環境から発展あるいは変化する可能性がある

平均的な乳腺濃度は人種によって異なるため、訓練データに十分に反映されていないデモグラフィック属性の人々を検査した場合、誤診断につながる可能性がある。

特定集団のデータばかりを使って進化すれば。それ以外の集団に害を与える可能性がある。

ボリス・バイッチ氏, I.グレン・コーエン氏, テオドロス・エフゲニュー氏, サラ・ゲルケ氏、友納仁子氏訳
機械学習による損失を避けるための5つのポイント,  Harvard Business Review9月号
前回からの進捗-ビルの輪郭部分がくっきりしてきたでしょうか?空も本格的に取り組み開始です!

まとめ

新しい環境への対応という点で必要とされるスキルについて考えてみました。

今回触れたのは、変化に柔軟に対応することデータマネジメント能力です。

前者は進化の歴史を考えると、人にとっても難易度が高いです。

必要なスキルを分解して、1つ1つ確実にスキルアップしていくことが対策となるでしょう。

情報収集能力、情報整理能力、理想を考える能力、行動/習慣を変える能力、コミュニケーション能力等でしょうか。

また、後者については統計の知識が必要になります。こちらは前者に比べて取っ掛かりは掴みやすいと感じます。

データへの向き合い方を教えてくれる最近人気の本としては「FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣(著:ハンス・ロスリング、日経BP社)」がお勧めです。

いずれにしても目の前の課題のみでなく、長期的な視点で必要なスキルを磨く姿勢の重要性が増しています。この記事が読者の皆様に、自分に必要なスキルは何かを考えるきっかけやサポートとなれば幸いです。

次回は最後のポイントについて考えていこうと思います!

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