体系的な「アイデアのつくり方」とは?-読書日記

どうもです!非常に暑い日々が続いておりますが、皆様健康にお過ごしでしょうか?私は若干夏バテ気味なので、活動時間を涼しい時間にずらしながら調整中です;

今回読んだのはジェームス・J・ヤング氏の「アイデアのつくり方」(翻訳:今井茂雄氏、解説:竹内均氏、出版:CCCメディアハウス)です。

変化の激しい昨今、自分らしさの実現や差別化を図るにはアイデアの存在が欠かせません。アイデアとは偶然が生み出すイメージもありますが、本書はアイデアを体系的に生み出す方法を紹介する一冊となります。

昨年Twitterやブログなど、新しい趣味を色々始めてみましたが、一年経って少しマンネリ感が出てきた今日この頃、新たな活動や挑戦のためのアイデアを生み出すため、本書を手に取りました。

それではどんな本か見ていきましょう!

今回の本:ジェームス・J・ヤング氏の「アイデアのつくり方」(翻訳:今井茂雄氏、解説:竹内均氏、出版:CCCメディアハウス)

本書の筆者と概要

筆者のヤング氏はアメリカで最大の広告代理店で副社長を、「アメリカの広告審議会」をはじめ多くの公職を務めた人物で、「広告の殿堂」にも登録されている広告界の第一人者の一人です。

広告業界は商品をいかに消費者に魅力的に伝えるかという観点で、アイデアが最も求められるビジネスの一つです。だからこそ、業界の第一人者である筆者の体系的な手段が、他の業界からも重宝されているという側面があります。


日本では1988年に初版となった本書ですが、77刷もされているロングセラー本となります。(2021/5/10時点)

また、東大名誉教授科学雑誌「Newton」初代編集長である竹内氏による解説で、本書の内容は竹内氏が自然科学の分野で練り上げた方法論と一致していると解説し、紹介された方法論は広告以外の幅広い分野で応用できることを示唆しています。

アイデアといえば、偶然の産物や天才に許された特権のようなイメージがあります。しかし、本書ではアイデアを効率よく生むためのアプローチ5段階に分けて、体系的な手段として紹介しています。

そのため本書は、アイデアなんて自分には縁が無いと諦めていた人にとって「希望の書」となりえる一冊となります。

本書の構成

本書は主に下記の通り構成されます。

  • まえがき
  • この考察をはじめたいきさつ
  • 経験による公式
  • パレートの学説
  • 心を訓練すること
  • 既存の要素を組み合わせること
  • アイデアは新しい組み合わせである
  • 心の消化過程
  • つねにそれを考えていること
  • 最後の段階
  • 二、三の追記
  • 解説

本書の特徴はシンプルさです。なんと本体が11-62pの52ページ分しかありません。そのため活字が苦手な方でもサクッと読める構成が魅力的です。


竹内氏の解説が、25ページで全体の約1/3を占めるという中々尖った構成です。

複雑な現代社会において、アイデアを作るという重要なテーマを扱いながらこのシンプルな構成非常に魅力的に感じました。シンプルであるがゆえに、筆者の主張も明確行動に移しやすいというメリットがあります。

実用的な読書をしたいけど、長文や難しい文を読めるかが不安という方にも、強くオススメできる一冊です。

本書で学んだ点

最も印象に残った点:アイデアの源泉にある原理

筆者はアイデアの源泉には下記二つの原理があり、その原理を把握するための訓練が重要であると主張します。

  1. アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
  2. 既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は 、事物との関連性を見つけ出す才能に依存するところが大きい

筆者は上記原理を理解する重要性を下記の通り主張します。

どんな技術を習得する場合にも、学ぶべき大切なことはまず第一に原理であり第二に方法である。

アイデアのつくり方 ジェームス・W・ヤング p25

この原理の理解が無ければ、体系的な方法を学んでもその意図が理解できず中途半端や見当違いな取り組みを生む可能性が高くなります。

その結果、成果に繋がらないため、折角学んだ方法も継続できなくなるでしょう。本書を実践する上でこの原理の把握が重要となります。


原理や本質の理解は知識・技術の流用や応用にも必要な過程になるので、広告業界の筆者の考えを我々の活躍する業界で活かすためにも重要となります。

アイデアは既存の要素の組み合わせ

アイデアには無から突然生まれる印象もありますが、実際は既存の要素の組み合わせに過ぎないと筆者は断言します。

どれだけの天才も予備知識が無ければ新しいアイデアは生まれません。ノーベル賞クラスの最新の科学技術も、人の歴史と共に積み上げられた莫大な科学知識背景に成り立っています。

解説でも、革新的過ぎて当時中々受け入れられなかった奇抜なアイデアであるウェゲナーの「大陸移動説」ダーウィンの「生物進化論」を例示し、両説とも要素となる理論を先人が既に提唱しており、両者の天才の仕事はまさに過去の要素を組み合わせて世に出したことであったことを指摘します。

アイデアは既存の要素の組み合わせに過ぎないという原理により、アイデアつくりを促進する方法論確立され、この方法論は多くの人にとって希望となりえます。

努力により効率化できるのであれば、アイデアをつくるスキルを後天的に鍛えられることを意味し、アイデア作りをあきらめる必要がなくなります。

そして次は、体系的なアイデアつくりのための更なるヒントを与える原理となります。

新しい組み合わせを作る才能は 、事物との関連性を見つけ出す才能に依存する

アイデアが既存の要素の組み合わせであるならば、次はその組み合わせをどのように作ればよいかが重要となります。ここで、事物との関連性を見つけることが、新しい組み合わせを作るための重要な要素となることが第二の原理として紹介されます。

関連性を探すには各事物の性質や特徴を理解する必要があります。事物の名前表面の情報のみでは、関連性を見つけることは出来ません。

最新のAIやブロックチェーン、GPS、IoTなどの言葉を知っていても、「どのような背景で構成され、どのような特性があり、何ができるのか?」が分からなければ、実用的で実現可能なアイデアは生まれません。

アイデアの種となる関連性を見つけるネタ帳とするために、入手した情報について要素や性質を整理して振り返れるように貯蔵する習慣が重要となります。


ここですべての分野に手を出すと、時間がいくらあっても足りないので、自分にとって重要な活動と関心のある領域(もしくはリベラルアーツのような汎用的な教養・知識)に絞ることも重要になります。

2つ目の原理は、アイデアを作る姿勢の中で最も鍛えるべきものであり、また個人差が大きい部分であると筆者は主張します。

事実と事実の間の関連性を探ろうとする心の習性が アイデア作成にはもっとも大切なものとなるのである。

アイデアのつくり方 ジェームス・W・ヤング p31

この関連性を見つけ出す才能を磨くことが、素晴らしいアイデアを生み出すために最も重要な点となります。この磨くべきポイントの理解が、後述の体系的な方法の意図を明確にし、その方法がなぜ有効なのかという説得力を強めます。

面白いと感じた点:アイデアを作るための5つのステップ

筆者は以上の2つの原理を踏まえた上でアイデアをつくるための体系的な方法として下記5つのステップを示します。

  1. 資料集め当面の課題のための資料一般的知識の貯蔵をたえず豊富にすることから生まれる資料
  2. 集めた資料の咀嚼、情報に手を加え深堀や別角度から考察し、組み合わせを考える
  3. 孵化段階無意識な脳の作業により組み合わせができるのを待つ
  4. アイデアの実際上の誕生の段階
  5. 現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具体化し、展開させる段階

上記の内、①、②、⑤意識的な段階③,④無意識の段階と分類することができます。無意識の段階についても、工夫はありますが、最も注力するべき段階意識的な段階、特に地道な努力が必要な最初の2つのステップであると筆者は主張します。

それぞれのステップを見ていきましょう。

第一段階:資料集め

一つ目はアイデアの元となる情報を集める段階です。筆者は、「このステップは当たり前と感じるかもしれまないが、ほとんどの人が無視して資料集めを疎かにしている」と主張しています。

実際この資料集めは、表面的な情報を集めるのみでなく、深堀してそれぞれの対象の特徴を明確にすることが求められます。ここまで深堀することで初めて第二原理事物同士の関連性が見えてくるようになります。

また、筆者は集めるべき情報を特殊情報一般的情報との二つに分類します。

  • 特殊資料:自分が取り組む課題に関する資料。広告で例えると販売する製品と消費者の情報
  • 一般的資料:リベラルアーツや大学の一般教養で扱う情報

この分類は資料を集める方法を考える上で参考になります。情報収集の習慣がある人でも、多くの人はいずれか片方の知識に偏りがちと思います。

一般的資料は専門的な技術や知識を、広く社会で活用するために必要なアイデアの源となります。一般資料の観点が欠けていると、その組み合わせの種類は限定的となり、また実用的で現実的なアイデアは生まれません。

一方で特殊資料が欠けている場合は、その人の専門性や個性が活かされず、既存のアイデアの再発見に留まる可能性が高くなります。アイデアに必要な新しさを生みだせなくなってしまうのです。

この両者をバランス良く収集し、いつでも振り返れるように貯蔵していくことが重要となります。


個人的に自主的に集める情報は心理学や哲学などの一般的情報に偏っている反面、仕事の特殊情報は会社からの研修任せになっているなと反省しました・・・。
第一段階:情報収集

第二段階:集めた情報に手を加える

次は集めた情報を咀嚼し、その意味や価値を深堀する段階となります。この段階をこなすヒントとして、筆者は意味をそのまま文字通りなぞるのではなく、横目で捉えるように別の視点や複数の視点で考えたり他の事物と組み合わせて考えることを推奨します。

この作業は意味を探すのではなく、意味の声に耳を傾けるようなものと筆者は表現します。

また、この段階に入るためには第一段階で集めた情報を振り返れる状況にしてあることが重要です。明文化した情報を振り返ることで、いろんな角度から検討したり、事物間での比較ができるようになり、入力した情報をアイデアに向けてフル活用できます。

この過程においても特殊資料と一般的資料を共に集める優位性があると感じました。異なる分野の情報を比較することは、それまでと異なる視点で事物を見ることにつながり、新たな側面や特徴を見つけるきっかけとなるためです。

筆者はこの第二段階までをトコトン突き詰めることを推奨します。もうこれ以上考えられないという状況になった時、初めて次の段階への扉が開きアイデアと出会えると筆者は主張します。

第二段階:集めた情報に手を加える。この段階をトコトン突き詰めることが重要

第三段階:孵化段階無意識の脳の作業

第三段階は心の消化過程と呼ばれる段階です。第二段階と打って変わって、ここからは無意識の力を用いた段階となり、筆者も努力は第二段階までで終了と説明しています。

第一、第二段階で蒔いたアイデアの種が花開くのを待つ段階になり、特段対象の情報に対して求められるアクションはありません。

筆者は問題を完全に放棄して、なんでもいいから自分の想像力を刺激するものに触れるよう指示します。この感情を刺激するものは、感動を呼び起こす趣味として劇場や映画や小説などが例示されています。

問題は放棄しつつ、脳の刺激は継続し、アイデアが湧き出やすい状況を維持することがこの段階では求められます。無意識の力を活用することでようやく第四段階「アイデアの誕生」が起こります。

第四段階:アイデアの誕生の段階

努力の第一、第二段階、無意識の第三段階を経て、ようやくアイデアと出会う第四段階に辿り着きます。この段階については、第一~三段階が完了していれば自然と訪れる段階として、詳細な説明はされておりません。

唯一、アイデアが思いつくのは思いがけない瞬間であることが指摘されます。アイデアとはふとした瞬間に思いつくことが知られており、故事でも三上(トイレ中、移動中、寝る前にひらめきが起こりやすい)という言葉があるほどです。

そしてこの瞬間を生み出すには、無意識の力を活用する第三段階が重要となることを示唆しています。

「LEARN LIKE A PRO-学び方の学び方」の記事で紹介した「集中モード」と「拡散モード」の使い分けによるアハ体験の創出が、まさにアイデアを思いつく上での無意識の力の利用方法に言及しており、本書の方法を裏付ける理論になると考えています。

第五段階:アイデアを具体化し、展開させる

第四段階でアイデアは誕生しましたが、優れたアイデアをつくるためのステップは誕生で終わりではありません。いかにそのアイデアを実現させ、現実の影響を生み出せるかが重要となります。

どんなに優れたアイデアも、実現できなければ机上の空論絵にかいた餅となります。そしてその実現のためには、忍耐強くアイデアに手を加え具体化し、現実の苛酷な条件をクリアする必要があります。

アイデアマンの努力不足により、多くのアイデアがこの最後の段階を乗り越えられず消えていくことを筆者は指摘します。

筆者はこの段階を乗り越える方法として、「理解ある人々の批判」を受けることを提案しています。

筆者曰く、良いアイデアは自分で成長する性質を持ちます。良いアイデアは見た人々を刺激し、刺激された人々はそのアイデアへ力添えをしたくなります。その結果、実現に向けてより幅広い視点から助言やサポートを受けることができるようになります。

個人的に、アイデアを人と共有する重要性は会社でも感じています。メイン業務以外でやりたいことを上長に頻繁に共有していたのですが、その結果、やりたいことに取り組めるサブ業務の担当を推薦いただいたり、サブ活動への助言をいただいたり、多くの恩恵をいただきました。

やりたいことやアイデアを自分の頭の中でとどめていただけでは、上記の恩恵を得られず、与えられた仕事のみをこなす状況が続いていたと思うので、アイデアを理解ある人々に共有することは重要であると実感しています。

本書では深く言及されていませんが、ポイントなのは理解ある人々という部分でしょう。最初の数人に否定されても、アイデアに共感してくれる理解者を諦めずに探し、適切な相談相手を見つけることが重要となるでしょう。

第五段階:アイデアの具体化、展開

行動に移すには?:明文化の習慣づけ

集めた情報や思いついたアイデアを明文化する

今回紹介したアイデアのつくり方の上で、行動に移す上でのポイント明文化を習慣化できるかであると考えます。努力が最も必要なのは第一段階、第二段階であり、共に必要となるキーアクションは明文化です。

この明文化が無いと、情報を振り返ったり、異なる視点から考察したり、事物同士を比較することもできません。アイデアのつくり方の5段階において、明文化により下記のメリットが見込めます。

  • 第一段階で一般的情報と特殊情報のバランスの偏りを確認できる
  • 第一段階で十分に深い情報が得られているか確認しやすくなる
  • 第二段階で情報の振り返り異なる視点からの考察事物同士の比較が可能となる
  • 第二段階で、媒体を工夫することで、事物同士の偶発的な組み合わせを生みだせる
  • 第二段階で、不完全でも組み合わせに関するアイデアをメモしておくことで、その後のアイデア作成を促進する(思考整理、振り返りにより改善策の発見)
  • 第一、二段階で言語化を介することで、言葉のセンスを磨くことができる
  • 第五段階で、他人に伝える時の参考資料となる、文章化がスムーズになる

意識的な活動が伴うすべての段階明文化が重要であることが分かります。また、5つの段階の中でこの明文化最も大きな習慣の変化が求められる活動と考えます。

そのため明文化を効率よく習慣に取り入れる方法を考えることで、本書の内容を行動に移しやすくできます。

明文化した情報を整理する方法を検討する

となると、どの媒体で記録をするのかが次のポイントとなります。本書ではお勧めとして、特大サイズの単語カード(約8cm×約12.5cm)が紙媒体として紹介されています。

現代は技術も発達したので、電子媒体も選択肢であると考えます。個人的にはメモアプリのEvernoteを愛用していましたが、機能の豊富さからWindows officeのOneNoteへ移行中です。

また、複雑な情報はMind MeisterXMindなどのマインドマップアプリが、情報整理に便利だなと感じています。

紙媒体電子媒体それぞれの特徴は下記でしょうか。

  • 紙媒体
    • メリット:手を動かすので想像力が刺激されやすい、単語カードを並べることで組み合わせがイメージしやすい
    • 注意点:筆記用具と単語カードの持ち運びが必要収納にスペースを取る情報の再構成が難しい
  • 電子媒体
    • メリット:デバイスさえあればいつでも記録・確認できるスペースを取らない、人との共有が容易、リンクを貼るなどの情報の紐づけが容易、情報の再構成や情報の修正・更新が容易
    • 注意点:同期やバックアップをしていないとデータが全滅する、睡眠の質を考慮すると寝る前に作業しづらい、専用のツールが無いと図を描きずらい、同時に表示できる情報に限りがある

習慣化する上でどの媒体が最適かは好みになります。どれが適切かピンと来ない場合は、無料版から試してみるのがオススメです。なんにせよ第一歩を踏み出すことが何よりも大事ですし、事前段階における考え過ぎによるフリーズは禁物です。

習慣づけのための継続へのモチベーションを生みだす

筆者は今回の方法論を紹介した理由として、紹介してもその方法を疑い実践しないものがほとんどであり、自分の優位性を脅かす危険性が無いためと述べています。

確かに紹介されたステップは日々の積み重ねを要求する側面もあり、継続するのは大変という印象も受けます。そのため、本書の内容を活かすにはモチベーションの維持も重要なカギとなるでしょう。

「Quiet-内向型人間の時代」で紹介したコア・パーソナル・プロジェクト(自分の能力に適し、過度のストレスがかからない、内発的動機による自主的な活動。取り組むことで勇気が湧いてくる。)等の、自分の指針モチベーションとなる人生のミッションの設定が重要になると考えます。

また自分の中で重要な活動を決めることは、集める情報の方向付けにも役立つので、第一段階の情報収集にも有効な施策となります。

終わりに

以上が、ジェームス・J・ヤング氏「アイデアのつくり方」(翻訳:今井茂雄氏、解説:竹内均氏、出版:CCCメディアハウス)に関する読書日記でした。

アイデアを考えるというのはどんな活動でも重要なスキルとなります。一見単調な作業と見えてもアイデア一つで、取り組み方や意義が大きく変わります。また、アイデアが採用されたときは自分の存在意義と貢献を実感でき、充実感を得ることも可能です。

汎用的なスキルであるアイデアをつくるための方法を掲示する本書は、アイデアづくりに悩む多くの人ヒントを掲示する一冊となります。

ポイントは原理を理解し、5段階から構成された方法実際に取り組むことが出来るかです。その上で、「行動に移すためには?」の章が参考になる点があれば幸いです!

それではまた次の記事で!

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