周囲の行動を変える仕掛け作り-読書日記

日々の読書した内容をまとめていく読書日記を始めます。自分の読書内容をまとめることで理解を深めるとともに、本ブログ読者の皆様に参考になる本を紹介したいです!

今回の本

大阪大学大学院経済学研究科で教授を務められている松村真宏氏の「仕掛学」です。

概要

「仕掛け」で問題解決へと人を導くことをコンセプトとされている松村真宏氏の著書です。

仕掛学とは著者の造語で、その対象となる仕掛けは本書内で下記のように定義されています。

本書では、問題解決につながる行動を誘うきっかけとなるもののうち、以下の3つの要件からなる「FAD要件」(それぞれの要件の英語の頭文字をつなげたもの)を、全て満たすものを「仕掛け」と定義する。

・公平性(Fairness):誰も不利益を被らない。

・誘因性(Attractiveness):行動が誘われる。

・目的の二重性(Duality of purpose):仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる。

仕掛け学 p36-37

人に行動を促すような工夫や仕組みが身の回りのあらゆるところに存在しています。

この仕掛けは人の行動に選択肢や影響を与え、人を動かすことで、問題を解決する汎用的なツールであり、その研究内容を一般の人向けに平易にしたものが本書となっています。

本書は4章で下記のように構成されています。

  • 序章:身近な仕掛けの例を元に仕掛けの目的や効果、定義に触れています。
  • 1章「仕掛けの基本」:仕掛けに必要なポイント注意点を記載しています。
  • 2章「仕掛けの仕組み」:仕掛けを構成要素に分解することで、その仕組みを掘り下げて記載しています。
  • 3章「仕掛けの発想法」:フレームワークや実例を交えて、仕掛けを考える方法に触れています。

序章、1章では読者にイメージを持たせて基本的なイメージやポイントを共有しています。

2章は恐らく本書内の目玉となる部分であり、複雑な仕組を含めた多様な仕掛けを調べ、16種類の原理の組み合わせへ整理した分類体系が出てきます。自分の身の回りや、自分の取り組む、検討している仕組みを体系的に考える上で非常に参考になる章となっています。

また、3章は読者にとってさらに気になる内容ではないでしょうか。実際に仕掛けを見つけたり、思いついたりするにはどうすればいいのかについて、複数のアプローチ方法を解説しています。

仕組みや読者によって考えやすいアプローチ方法は異なるので、複数の方法が解説されているのは非常に参考にしやすいポイントではないでしょうか。

また、この本の特徴として、様々な仕組みの実例を写真付きで紹介してくれています。そのため、本の内容を実際のケースと比較することでイメージを深めながら読み進めることができるので、非常に理解しやすいと感じました。

読みたいと思った理由

私の将来の夢はかかわる人々の挑戦を後押しして、明るく自分らしく生きる人を増やしていくことで、少しでも世界をより明るく良いものにすることです。

そして実際に世界を変えていくには、人の行動にまで影響を及ぼす必要があります。物事を変えるためには何かしらの行動が必要になるためです。

そのため、夢をかなえるための取り組みを考えていくヒントを得るためにこの本が役に立つと感じました。

必要なツールが分かっていれば、何を勉強しなければいけないかの見当が付けられますし、将来必要になるスキルの習得に早めに取り組むことも可能です!

読むのをオススメしたい方

自身の活動で何かを達成したいと考えている方には非常に参考になる本だと思います。自分の活動を人に注目してもらいたい、人に参加してもらいたい、人に影響を与えたいといった各ポイントで参考になる点があるはずです。

また、人に影響を与えるより良い仕組みを作るというのはあらゆる仕事でかかせないポイントと思いますので、幅広い方へ参考となる点がある本です。

読んで感じたポイント

一番印象に残った点:仕掛けが働くために必要な2段階のトリガ

2章の仕掛けの仕組みにおいて、仕掛けの構成要素を16個に分けています。その中で「物理的トリガ」「心理的トリガ」という大分類が非常に興味深かったです。内容を引用すると下記です。

物理的トリガは知覚される物理的な特徴、心理的トリガは人の内面に生じる心理的な働きのこと(中略)

心理的トリガは物理的トリガによって引き起こされ、互いが結びつく関係にあるとき、その仕掛けはうまく機能する。

仕掛け学 p88

仕掛けを二段階に分けるというこの切り口はが非常にわかりやすかったです。

まず、仕掛けは人に知覚されなければ効果を発揮できません。どんなに素晴らしい楽曲を作っても、それが演奏されなければその魅力を発揮することはできません。演奏して人に知覚できる状態になって初めて音楽の力を発揮します。

どのように人に知覚させるか、またどのような情報を人に与えるかというのは、仕掛けの入り口として非常に重要な切り口となります。

また、与えた情報が人に意図する反応を起こすかも重要なポイントとなります。折角、人にコンテンツを届けても、意図しない反応や行動を引き起こしてしまっては目的の達成ができません。

これらは文字にすると当たり前と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際の取り組みを考える時は、両者を混同し、本当の問題点にたどり着けないというケースは少なくありません。

この問題点が中々わからないという迷宮に入ってしまった時に、この二段階への分類は、問題点を整理して考える取っ掛かりを掴む上で大変参考にすることが出来ます。

面白いと感じた点:強い仕掛けと弱い仕掛けとは?

そのほかで個人的に面白いと感じた点は、仕掛けの強弱に関する記載です。

仕掛けに対する反応の強弱は仕掛けの「便益」と「負担」によって特徴づけられる(中略)

便益は仕掛けによってもたらされる嬉しい、楽しい、期待、達成感といった主観的な感情のこと(中略)

負担は仕掛けによって行動を変えるときにかかる体力的・時間的・費用的な負担のことである。

仕掛け学 p62-63

便益が負担を大きく上回るときに、多くの人の行動に変化を与える強い仕掛けとなります。

どんなに素晴らしい効果をもたらす選択肢があっても、そのための負担が大きければ、人はその選択肢を選びにくくなります。一方、どんなに負担が小さい選択肢でもあっても、効果やその実感が薄ければ、長く人を惹きつける魅力はありません。

どちらか一方を追い求めるあまり、もう片方が疎かになっていないかという視点が重要になります。

非常にシンプルではありますが、シンプルであるがゆえに分かりやすく、人に影響を与えることを目的とした多くの取り組みに応用できる考え方だと感じます。

自分の行動に取り入れるなら:自分の活動内の仕掛けを見直す、新しい仕掛けを考える

本書の内容を取り入れるのであれば、やはり、自分の活動の影響を高めるための仕掛けを考える上での参考とすることでしょう。

自分の活動を見直す

自分の思い通りの結果が得られていない場合、活動の中の仕掛けの一部がうまくいっていない、もしくは自分の活動の影響を増幅するために仕掛けを追加する必要があるケースが考えられます。

仕掛けが上手くいっていない場合はその改善が必要となります。その際に2章の「仕掛けの仕組み」を参考にすることで自身の仕掛けを分解して、どこを直す必要があるかを考える取っ掛かりとすることができます。

例えば上記で触れた大分類の「物理的トリガ」と「心理的トリガ」に分けてみましょう。

まず、ターゲットに自分の活動の影響が届いているか、そしてそれは意図する情報であるかを考えることで、伝達方法や広報方法を見直すことができます。

一方、ターゲットに届いてはいるが、自分の意図しない心理的反応を引き起こしている可能性があります。その場合は、自分の活動の目的と内容が合致しているかを振り返る必要があります。

この振り返りから自分が得意とする表現方法が自分の想定と異なっていることに気付くことや、新たな活動の目的が見つかる可能性もあります。

また、新しい仕掛けが必要となる場合は3章の「仕掛けの発想法」が直接参考になります。

仕掛けを考えるスキルを磨く

まだ、具体的にアイディアが無い場合でも、本書の内容を活用してアイディアを作る練習は可能です。

例えば、本書内の実例や身の回りの仕組みを分解してみて仕掛けについての理解を深める。また、分解結果から、仕組みを改善するには自分ならどうするかを考えるのは実践的なトレーニングになります。

この取り組みは身の回りの仕組みに対するアンテナを広げることができるので、日常生活でのインプット力を高めることにつながります。

また、実例を観ていくことで、自分の活動や作品に取り入れられるポイントが見つかり、改善や発想のヒントを得ることも可能です。本書では多くの事例が紹介されているので、刺激という面でもインプットが期待できる本です

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