科学的な視点から幸福について考える。3つの幸福とは?-読書日記(2/2)

樺沢 紫苑氏「精神科医が見つけた3つの幸福-最新科学から最高の人生をつくる方法」(飛鳥新社出版)についての読書日記の後編です。

前回は概要に私の経験を少し踏まえて整理しました。今回は読んだ感想特に重要と感じたポイントをピックアップしていきます!

読んで感じたポイント

一番印象に残ったポイント:「受動的娯楽」をやめて「能動的娯楽」に取り組む

能動的娯楽によるメリット

個人的に最も印象に残ったのは、能動的娯楽の重要性です。

筆者は主に下記の理由により、「遊ぶ」ほどに幸せになると第7章で主張しています。

  • 1日でストレスの収支を合わせることができる(気分転換となるためストレスが蓄積されない)
  • 多くの幸福物質をもたらすフロー体験につながる
  • 創造性・好奇心が刺激され研ぎ澄まされていき、仕事にも生かせる
  • 日々の小さい幸せが増えていく
  • 自分にとってより有意義な時間を増やせる
  • アウトプットを通して自己成長に繋がる

その上で重要となるポイントは、ただ遊ぶ時間を増やすのではなく、能動的娯楽を増やすことです。

受動的娯楽とは、ほとんど集中力を使わずスキルも必要としない娯楽であり、テレビやネットサーフィン、動画視聴などがあげられます。

一方、集中力、目標設定、そしてスキルの向上が必要となるのが能動的娯楽であり、楽器の演奏や読書、スポーツなどがあげられます。

筆者はその特徴を下記の通りに分類しています。

p341の図を引用、斜線部分は本ブログで追記もしくは一部記載変更した箇所

この表は「フロー体験入門-楽しみと想像の心理学」(M.チクセントミハイ著、大森 弘訳、世界思想社)をもとに作成されたとのことで、個人的に関心が非常に高い分野であるため、是非元となった本も読んでみる予定です。

コンテンツを受動的に消費するのみでは、受けられる刺激は限定的であり、自己成長や長期的な人生の充実度に繋げることは難しいです。

そのため、より人生の充実を図るためのアプローチとして、「能動的娯楽」に取り組む時間を増やすことが有効となります。

今後の日本に対する個人的な懸念

コロナ禍で行動が制限されたり、動画コンテンツの充実化により、受動的な娯楽の割合が増えているのではと推測しています。

実際、周囲の方におうち時間の過ごし方を聞いても、動画コンテンツや漫画アプリ等の受動的娯楽があがることが多いです。

K
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ただ、受動的娯楽も疲労の回復リラックスという観点で大事な時間となるので、本書でも私も受動的娯楽を否定しているわけではありません。あくまでバランスの問題ですね。

そのため、受動的娯楽の中毒となり、いつまでも満足感が出来ない人々が出てくる問題に繋がるのではないかと懸念しています。

そのような状況を回避するためにも、能動的娯楽の重要性の周知能動的娯楽へ取り組む後押しやきっかけ作りを微力ながらでも続けていきたいと考えています。

能動的娯楽といきなりいわれても、何から始めればいいのか迷う方も少なくないと思いますが、下記の基準を元に取り組むことで選択肢を増やしたり受動的娯楽を能動的娯楽へ変化できます。

チクセントミハイ教授によると、「集中力を高める」「目標を設定する」「スキルアップする」の3つの条件がそろえば、「能動的娯楽」となります。あなたが普段、漫然とやっている娯楽も、目標を設定し「アウトプット」と組み合わせることによって、「能動的娯楽」に変えることができるのです。

精神科医が見つけた3つの幸福-最新科学から最高の人生をつくる方法 p343

印象に残った理由

私は趣味が人生を充実させるために重要な要素だと考えていて、趣味によるメリットに関する私見をまとめることから本ブログは開始しました。

その私見を補強する内容であったため、強く印象に残りました。私は趣味をインプット系アウトプット系という刺激の向きによる分類をしていました。

しかし、人生の充実に繋がるという観点では、受動的娯楽と能動的娯楽という切り口の方がより本質的であると感じました。

今回、インプットした内容を元に、過去の記事をブラッシュアップしようかなぁと思ったりもしています。

面白いと感じた点: ドーパミン的幸福を他の幸福を組み合わせる

ドーパミン的幸福のコントロール

新しい発見により面白いと感じた点はドーパミン的幸福のコントロール方法です。

私はドーパミン的幸福には依存性があることを知っていたのですが、それゆえに遠ざけることのみを考えていました。

しかし、ドーパミン的幸福も人間の脳の生理的機能と本能に従った自然なものとなります。

この本来あるべき衝動を無理やり閉じ込めようとしても、自分をだましていることになり、自分の本能とめざそうとする姿の中で摩擦が生まれます。

本書の主に第6, 7章で紹介されるドーパミン的幸福のコントロール方法は、ドーパミン的幸福を遠ざけるのではなく、ドーパミン的幸福を依存度にならないように注意しながら、得られる幸福を最大化するものとなります。

この考え方を取り入れることで、人間本来の欲求や本能から背くことなくドーパミン的幸福による依存性の危険をコントロールしながらドーパミン的幸福による幸せを享受することができます。

この考え方は、ドーパミン的幸福による依存性への対処法を遠ざけることしか考えていなかった私にとっては大きな学びとなりました。

ドーパミン的幸福を他の幸福と組み合わせる

また、その中で最も印象に残ったのが、ドーパミン的幸福をオキシトシン的幸福と組み合わせるという方法です。

具体的には、感謝の気持ちを組み合わせることです。感謝の気持ちはオキシトシン的幸福を引き起こします。

お金を稼ぐことのみを目的としている状態では、ドーパミン的幸福しか得られないため、一時的でかつ逓減的な幸福しか得られません。

そのため、同じ刺激では満足できないため、際限のない欲望に苛まれ、いつまでも十分な満足を得ることができません。

一方、感謝によるオキシトシン的幸福を組み合わせる幸福の質も量も変化することを筆者は指摘します。

ところが感謝の気持ちを持ってお金を使うと、「お金を得てうれしい」という気持ちに「自分のためにお金を払ってくれたお客様に感謝」「社員の1人1人に感謝」「自社の商品を製作してくれている下請け会社の人に感謝」「自分の仕事を応援しているビジネスパートナーへの感謝」など、様々な「感謝」が上乗せされます。

精神科医が見つけた3つの幸福-最新科学から最高の人生をつくる方法 p255

ドーパミン的幸福と異なり、オキシトシン的幸福逓減しづらいため持続的な幸福感を得られます。

そのため、ドーパミン的幸福による依存症に陥ることなく、自分にとっての本当の幸福への道を見失いづらくします。

ドーパミン的幸福を遠ざけるのではなく、オキシトシン的幸福と組み合わせる等の具体的な方法を用いて、ドーパミン的幸福のコントロールを意識的に取り組もうと感じました。

行動に取り入れるなら?

本書は第3-7章がどのように幸福を高められるかという具体的なTo doとなっているので、行動に取り入れやすい一冊となっています。

ただ、多くのアクションがあるので、どれから取り掛かるかという優先順位付けは大事になると考えます。

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この優先順位付けが時間が掛かる障壁となるなら、気になるものから始めて効果を実感するというのも一つのアプローチだと思います!

基本的には本書の「セロトニン的幸福→オキシトシン的幸福→ドーパミン幸福」という「幸せの三段重理論」に沿うことが推奨でしょう。

その上で、人生に悪影響を与える大きなポイントがあれば、そこから重点的に取り掛かるのが効果的と考えます。

たとえば、オキシトシン的幸福不足による孤独や、ドーパミン的幸福の暴走が問題となっている場合は、セロトニン的幸福より優先的に取り組むべきでしょう。

その後、大きな問題を解決した後に 「セロトニン的幸福→オキシトシン的幸福→ドーパミン幸福」という順番で、より包括的に取り組む流れを想定します。

また、3つの幸福をバランス良く積み上げるという観点では、重点的に取り組むポイントと並行して他の幸福にも取り組むという姿勢が重要でしょう。

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手当たり次第に手を付けて中途半端な結果にならないように注意も必要と感じています。

私が実践しはじめた取り組み①:3行ポジティブ日記

3行ポジティブ日記と期待される効果

セロトニン的幸福を感じるための方法として紹介されているのが3行ポジティブ日記です。

セロトニン的幸福は健康に関連する幸福であるため、持っている時は当たり前の存在として、その有難みを見失いがちです。

そのため、今自分の持っている幸せを確認し、しっかり認識する習慣が重要となります。

3行ポジティブ日記は、どのような良いことがあったかを1日の終わりに振り返ることで、ポジティブな出来事を思い出してアウトプットする習慣を生み出します。

この習慣により、今まで通り過ぎていた当たり前の幸せに気づき、またその記憶を強化することができます。

この取り組みによる、人生に対する自己認識がポジティブなものに変わり、より多くの充実感に繋がります。

また、筆者はこの3行ポジティブ日記にオキシトシン的幸福として「感謝の言葉」を足し合わせることで、その効果を高められると主張します。

つまり、「健康の感謝」をアウトプットすると、セロトニン的幸福に加えてオキシトシン的幸福も手に入る。オキシトシン的幸福は、健康にもいい物質ですから、「健康に感謝」することで、より健康になっていくのです。セロトニン的幸福をしっかり味わい、それをアウトプットするだけで、セロトニン的幸福とオキシトシン的幸福が満ち足りていく。あなたの「幸福の基盤」が盤石となるのです。

精神科医が見つけた3つの幸福-最新科学から最高の人生をつくる方法 p130

この「幸福の基盤」は、病気の予防に繋がる行動や問題となる習慣の改善というアクションを引き起こすモチベーションに繋がり、認識のみでなく健康という実際の状態にまでポジティブな影響を及ぼす効果が期待できます。

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オキシトシン的幸福はドーパミン的幸福やセロトニン的幸福と組み合わせることで、その幸福の量や質を増やしてくれる調味料のような働きをしてくれますね。

始めてみた実感

これまで、私は日記を書く習慣が無かったので、このような幸福のアウトプット活動に取り掛かれていませんでした。

本書では実際の記載例や、実践者が感じた効果も紹介されており、この取り組みの重要性を実感しました。

本来、紙ベースで実施するべきなのでしょうが、まず効果を自分の経験から実感するため、スマホのevernoteアプリを用いて取り組みを開始してみました。

まだ一週間ちょっとですが、どんな幸福な出来事があったかを一日の終わりに振り返ることで、一日の達成感を実感できています。

また、自分に取って幸せにつながる行動や要素も視覚化できるので、自分が取るべきアクションを整理できます。

たとえば、口だけの約束となっていた友人の約束に対し、これまでは相手からの連絡待ちでしたが、自主的に提案する姿勢が身についてきました。

私が実践しはじめた取り組み②:マインドフルネス物欲、3つの幸福に転化

何か物を買うときにそれを買うことが目的となってしまうと、ドーパミン的幸福が支配的になり、買い物依存症に繋がる危険性があります。

しかし、それを使ったり、所持することで幸福度とテンションが上がるかという、買った後の具体的かつ継続的な幸せにつながるかを考えることで、物を買いたいという物欲をセロトニン的幸福オキシトシン的幸福につなげることができます。

これは、幸福度をあげるのみでなく、無駄な買い物を少なくできるという金銭的なメリットも生み出すと考えています。

また、実際に購入した後に、健康というセロトニン的幸福やつながりや感謝というオキシトシン的幸福を意識して使用することで、お金から3つの幸福という価値をバランス良く引き出せるようになります。

こちらははじめたばかりということもあり、まだ整理できるほどの具体的な効果を得られていません。

抽象的ではありますが、ポジティブ日記を書く際に食事や買ったものを使用した際の幸福感を思いだしやすくなったり趣味や娯楽について友人と一緒に楽しむことを強く意識するようになりました。

K
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ほかにも取り組んでいるものはたくさんありますが、キリがなくなってしまうので、優先度の高い2つにとどめさせていただきます笑

終わりに

これまでも、自分が気に入った本に絞って読書日記を書いてきましたが、本書は特に強く広くオススメ出来る一冊だなと感じました。

自分の幸せを増幅することで人生の充実度や可能性を拡大し、その過程や成果により社会への還元も大きくしていきたいなと感じました。

また、個人的に面白いなと感じたのは、 「セロトニン的幸福→オキシトシン的幸福→ドーパミン幸福」という「幸せの三段重理論」 が、マズローの欲求5段階説ともリンクしているように感じた点です。

それぞれの欲求と関連しそうな幸福を紐づけると下記のように三段重理論と同じような順番になります。

私が考察した各欲求が満たされると得られる幸福の種類

ホルモンという生理学的な視点から過去の心理学の偉人の説を検証するのも興味深そうだなと感じました。

さて、年始は一年の目標を決めたり、新しいことを始めたり、自分の人生の方向性を見直すのに丁度良い時期です。

一方、今が年始以外だとしても最高のタイミングを決めるのは自分次第です。

日々や人生の充実感に物足りなさや不安を感じている場合、是非、自分の幸せの量と質のバランスが十分であるか振り返る時間を設けてほしいと思います。

その際に、本書は理論と具体的な方法の紹介により、実用的な1冊となっているためオススメです!

それではまた次の記事で!

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