フロー体験で普段の活動による楽しみと創造性を増す4/5:読書日記

引き続きフロー体験について、M・チクセントミハイ氏「フロー体験入門-楽しみと創造の心理学」(訳:大森弘氏、世界思想社)を元に整理していきます。

前回レジャー活動というカテゴリーと他者とのコミュニケーションという切り口で日常の中のフロー体験を整理しました。

ここまでの内容で、「フロー体験についてイメージがつかめてきたけど、どうすればフロー体験を増やせるのかがわからない」という方もいらっしゃると思います。

今回から生活にフロー体験の知識を活かすという観点で実践的な部分を整理していきたいと思います。人生の中でフロー体験を増やして日々の充実感を増す方法を学んでいきましょう!

今回は日々の生活での注意点という比較的すぐに実践しやすい短期的視点が中心で、最終回となる次回では人生に対する向き合い方という長期寄りの視点で整理していきます。

フロー体験を日々の生活に組み込もう!

フロー体験は習慣の改善によって増やせる。

フロー体験はその活動がもたらす楽しみや創造性により、その活動をすること自体が目的となる体験です。フロー体験は下記のような要素により高い集中力を生み、高度な集中状態を伴う活動の中で高い満足感を得ることができます。

  • 明確な目標
  • 迅速なフィードバック
  • 活動の機会
  • バランスの取れたスキル

ここでポイントとなるのは、人によってフロー体験を得る回数が大きく異なる点です。人がどのような活動に時間エネルギーを割き、そしてその活動にどのように向き合うかによって、全く異なる心理的影響が得られます。

この違いは幼少期から形成された習慣の差により生まれます。何事にも熱意と好奇心を持ち主体的に行動を続ける人と、周囲から与えられた課題や娯楽を中心とした受動的な行動を続ける人ではフロー体験の頻度が大きく異なります。

そして、この習慣は日々の行動によってそれぞれの方向により強化されていきます。フロー体験が多い人はスキルの成長とモチベーションの継続により積極的な活動へ、受動的な経験が多い人は成功体験の少なさとエネルギーの枯渇により消極的な過ごし方をより好むようになります。

それではこの習慣は一度身についたら不変のものなのでしょうか?大人になってからの改善は難しいのでしょうか?筆者は80歳を超えてからフロー体験への挑戦に成功した方の例を示しながら、習慣の改善が可能であると主張します。そしてそのポイントを場面や視点により章を分けて解説していきます。

筆者はまずフロー体験を感じやすい活動として、仕事人間関係という場面をピックアップしてポイントを整理します。フロー体験を増やすためにそれぞれどこがポイントとなるかを見ていきましょう。

仕事

まず筆者はほとんどの人にとって人生の大部分を占める仕事という活動を取り上げます。割く時間が多い分この活動の充実度は人生の質への影響も大きいのですが、多くの人はお金を得るためのやり過ごす時間としてその価値を失っていると筆者は指摘します。

筆者は仕事を不愉快に感じるのは主に下記3つの理由があるとし、これらの障害を取り除く力が我々にはあると主張します。

  • 無意味と感じる仕事を生計のために無理強いされている
  • 仕事が退屈で月並みであり、変化や挑戦の機会が見つからない
  • ストレスが多く、重圧の元で働いている

筆者は仕事がやりがいがなく、退屈で、ストレスが多い場合、唯一の根本的な解決策は、物質的な快適を失っても仕事を手放すことであると主張します。

ただ、この判断は非常に難しいものとなります。受身姿勢が習慣化している場合は特にその選択肢のハードルが高くなるでしょう。行動を起こすためには、自分にとってその選択が本当に必要だと納得できることが重要となります。

そのためには自分の現状や気持ちと向き合うこと自分の中の価値観を明確にすることが第一歩となります。過去に取り上げた「DIE WITH ZERO – 人生が豊かになりすぎる究極のルール」における「死ぬまでにやりたいことリスト」や、何歳までにそれをするべきかを考えて作成したTo do list「タイムバケット」がそのヒントとなるでしょう。

一方で筆者は転職以外にも仕事でフロー体験を感じるためのヒントを提供します。

自分の仕事への認識を変える

現代社会は専門化と分業が進む中、それぞれの作業の価値が見出しにくいという問題点があります。それぞれの工程がどれだけ重要であっても、与えられた仕事をこなすだけでは視野が狭くなり、完成品や実際にどのように社会や人の役に立っているかが実感しにくくなります。

この状況を変える手段として、仕事で要求されるものを超えて何が必要であるかを考えて気を配ることで、取るに足らない仕事も世界をよりよいものにするための素晴らしい活動になりえると筆者は主張します。

ここで重要なのは注意力と心理的エネルギーを十分に注ぐことです。注意力を注ぐことで本来の目的の再確認や、自発的な目標の設定に繋がります。また、チャレンジや多様性が欠けた仕事を、より魅力的な挑戦に変えるには心理的なエネルギーが必要となります。

当たり前のことかもしれませんが楽して成果は得られません。そのため、仕事に消極的な姿勢では仕事からの楽しみを得る機会も限られるため、関心や集中がどんどん薄れてしまいます。

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燃え尽き気味の時や心身のエネルギーが枯渇した状態で、さらにエネルギーを注ごうとすると、活動や幸福の基礎となる心身の健康が損なわれてしまうので、そのバランスには注意が必要です。

具体的にどのような点に集中やエネルギーを割けばいいかについて筆者は下記の通り助言を送ります。

いくらかの努力なしには、つまらない仕事はつまらないままだろう。基本的な解決策はまったく簡単である。まず仕事に伴う各ステップに細心の注意を払い、次のように問うのである。このステップは必要だろうか。誰がそれを必要とするのか。もしそれがほんとうに必要なら、もっとうまく、速く、効率的にできるだろうか。どんなステップを付け加えたら、自分の貢献はもっと価値のあるものになるだろうか。

フロー体験入門-楽しみと創造の心理学 第7章 生活のパターンを変えよう p147

この試みは現在の仕事の中の価値を再発見する機会と、変化や新しい挑戦を生むきっかけを提供します。価値を確認できればモチベーションや挑戦心は高まりますし、挑戦の中では自発的な目標設定自身のスキルの活用というフロー体験に繋がる要素が生まれます。

もしかすると最初の変化は少しかもしれません。しかし、この習慣はスキルの成長を生むため継続により出来ることはどんどん広がります。また、集中力を上げることで情報への関心とアンテナも広がるため、アイディアやそれを活かす機会の拡大も期待できます。

仕事を自分で制御する

ストレス集中力やモチベーションを妨害するため、フローの妨げの原因となります。筆者はストレスの内、不安や緊張をもたらす外的な重圧を取り上げ、この重圧をいかにネガティブな体験としないかに着目します。

実際に仕事の中で重圧をゼロにすることは現実的ではありません。想定外の状況新しい挑戦周囲の期待など重圧の源が溢れています。

また、仮に重圧を限りなくゼロにできたとしても、それは緊張感の無い退屈で変化のない仕事を意味し、無意義な時間を増やすことにつながります。以前の記事で触れた通り、充実感をもたらすフロー体験を生むには適切な難易度のチャレンジが必要となります。

一方でこの重圧による影響は捉え方により大きく変化することがポイントです。勿論これだけ書くと根性論のようになってしまいますが、筆者は具体的な方法を掲示します。

まず重要なのは重圧の原因となる状況を自分が乗り越えられる考えられる状況を作ることです。そのためには、状況の整理が必要になります。複雑な情報が絡み合う状態では、何から手を付ければいいかも含めて分からないことも多いため、自分でなんとかできるかという自信が持てずに重圧は大きくなります。

この状況を回避するには何が重要で自分がやらなければならないかを整理して優先順位をつけることが有用です。複雑な状況を細かいアクションに分類して、人にお願いできるものややらなくていいものを特定し、自分のやらなければいけないことをリストや順序をつけてフローチャート化することで、何をしなければいけないかを明確化します。

何をすべきか明確であることは、フロー状態にある人が良く経験する体験であり、物事の解決に集中力を注ぐのに重要なポイントになります。フローチャート化とまでいかなくても、自分の悩みや恐怖をノートに整理することは自分の状況の視覚化と整理につながり、脳内の負荷を下げて対処法を考えやすくするため、ストレスの軽減につながります。

逆に自分にどうにもできないことや起きていないことまで悩み続ける人は、問題解決以外にエネルギーを割いてしまうため、問題がいつまでも進展せず、コントロール感を失ってしまいストレスも大きくなります。

恐怖の視覚化については関連するTED Talkがあったのでこちらも是非ご視聴ください。

人間関係

切り口は少し変わりますが、人間関係も仕事と同様に生活の多くを占める活動となります。まず筆者は最も基礎となる人間関係である家族について、良好な関係を築くためのコツを掲示します。

まず一つ目は十分な心理的エネルギーを注ぐことです。人の心理的エネルギーには限界があります。そのため仕事に多くの心理的エネルギーを取られると、家族に向けられるエネルギーは必然的に小さくなります。

仕事により得られた賃金は家族へ食べ物や住居等の物質的な価値を提供しますが、それのみでは心理的なエネルギーは提供されません。「家族ともっと時間を過ごせばよかった」という後悔は、人生の後悔に関する調査で上位に頻出します。

価値が高いはずの家族へ割くべきエネルギーまで仕事に注ぎ過ぎていないか自分の人生にとっての価値あるもの注ぐエネルギーバランスの見直しが重要となります。これは自分の人生のコントロールを取り戻すという観点でも重要な視点になります。

また心理的エネルギーを効率よく活用するために、前回の記事で記載した通り、無駄な議論や過剰なルールによる心理的エネルギーの浪費が無いかを確認することもアプローチとなります。

そしてより強固な関係を築くにはお互いへの関心共通の目標という、メンバーそれぞれが家族に対して心理的エネルギーをより注ぎたくなる要素が鍵となります。このような要素があれば、自然とお互いを勇気づけあえる関係へと進化していきます。

そのためには前回記事で記載したフロー体験を生み出す交流の条件が行動を変えるヒントとなるでしょう。

  • 自分の目標と他者または他者たちとの目標との間に、いくらかの調和の可能性があること
  • ほかのひとの目標に喜んで注意を注ぐこと

この交流の条件は家族に限らず、全てのコミュケーションに応用できるポイントとなります。特に「ほかのひとの目標」に関心を持つことは、初対面の人との会話でも取り入れやすい点が特徴です。

筆者はフロー体験を生み出す交流の条件会話に取り入れるコツを下記の通りに整理します。

よい会話を始めるための秘訣はほんとうに簡単である。第一のステップは、ほかの人の目標が何であるかを見つけることである。その時相手に何に興味をもっているか。何に参加しているか。相手が何をやり遂げたか、または何をやり遂げようとしているか。もしこのうちどれかが追求する価値があるように聞こえたなら、次のすってぷは相手が取り上げた話題に関して、自分自身の体験か専門的知識を利用することである-会話を乗っ取らないよう一緒に発展させながら。

フロー体験入門-楽しみと創造の心理学 第7章 生活のパターンを変えよう p162-163

まとめると相手の関心が何かを傾聴して、会話を乗っ取らないように注意しながら、自身の経験や知識を活かして会話の深堀と発展をさせることとなります。表面的でも自分本位な会話でもなく、相手の興味を引き出す会話がポイントになりますね。そして、さらに自分の知見を加えることによる刺激で、新たな発見を生みだすことで会話の中でのフロー体験を期待できます。

相手から本音をいきなり聞き出すのは仲が良い友人でも難しいと思います。夢とか人生の目標とかの話って中々するの恥ずかしい部分があったりしますからね。

有用な対策としては自分の関心や目標を自分側から打ち明けることが挙げられます。まず率先して自己開示することで相手が話しやすい環境を作ることが重要です。相手から受けたものを返そうとする返報性の法則も合わさり、相手も本音を話しやすくなります。

K
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個人の経験ですが友人と関心毎や目標まで話せた時は、ただの世間話よりも満足度が高いです。またその友人は特別な存在であると実感できるので、信頼関係をより強固にする効果もあると考えています。

ここまで仕事人間関係という観点で、生活にフロー体験の知識を取り入れるためのコツを考えてきました。仕事目的意識を持ってやるべきことに集中して取り組むこと、人間関係では相手の関心に着目して深堀・発展させていくことがポイントです。

次回は人生との向き合い方というより長期的な視点について考えます。取り組みが場面限定ではなく視点も長期的になるため、エネルギーを多く要し難易度も高いですが、その分効果の範囲は広く長いので人生の質への影響も大きくなります。

そして次回でいよいよフロー体験についての最終回です。ここまでで皆様の生活に取り入れられそうなポイントはありましたでしょうか?日々の生活の取り組みについて考えてみるきっかけや参考になっていれば嬉しく思います。

それではまた次の記事で!

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