マスロー「完全なる人間」を図を交えて整理してみる_1

どうもです!今回は久しぶりに深読記事で、アブラハム・H・マスロー氏「完全なる人間-魂のめざすもの」を取り上げます!

私は本書をカバーが無くなるほど愛読しているのですが、少し独特な言い回しに私の読解力が追い付かず、一部内容を落とし込めていないと感じる点がありました。

今回ブログの記事とすることで、自分の理解を整理し、本書の素晴らしさを皆様にお伝えしつつ、本書の狙いである人生に豊かな意味を持たせる方法読者の皆様と考える機会を作れればと考えています!

筆者と本書について

筆者:アブラハム・H・マスロー氏

筆者はアメリカ合衆国の心理学者アブラハム・H・マスロー氏で、人間性心理学の最も重要な生みの親と呼ばれています。


マズロー表記が日本ではよく目にしますが、本書の表記を尊重して本記事では「マスロー」表記で統一します。

マスローの人間の欲求階層説

マスロー氏の最も有名な理論は人間の欲求階層説でしょう。授業か会話、その他の書籍で耳や目にしたことがある方も少なくないと思います。

人間の欲求は階層性を持っており、人間は多様な欲求の内、生存や安全を得るために必要な最低点の低次の欲求から積みあげていき、最終的には最上の欲求の自己実現を目指して成長する生き物と仮定した理論です。

マスローの欲求階層説を説明するピラミッド図

この理論の登場以前、人は良く生きるために、低次か高次という欲求の二択の選択を迫られていました。極端に言えば一切の欲求を切り捨て倫理的に生きるか、それとも欲求に忠実に生きるかという対立です。

欲求階層説はこの二律背反の対立の構造に一石を投じ、低次と高次の欲求を同時に追求できる網羅的な選択肢を人々に与えました。

欲求階層説の登場により、人は快適に生きる上でも重要な生来備えている欲求を満たしながら自分のあるべき姿を更に追求するという道を選択しやすくなりました。


欲求の暴走は身を滅ぼす原因ですが、本能も含めた欲求を全否定することは、本来の姿からの乖離を意味し、無理から心身を壊す原因ともなります。

人間性心理学とは

人間性心理学とは主体性・創造性・自己実現といった人間の肯定的な側面に着目した心理学で、当時確立していた客観的な行動主義的心理学や正当派のフロイト主義に対し、第三の心理学と呼ばれています。

筆者は人間性心理学を、一般的世界観の一側面であり、新しい人生哲学であり、新しい人間の概念であり、新しい仕事の世紀の始まりであるとし、この心理学により、人は内面的な精神面に加え、社会の中での役割や立場を含めた社会的存在としても、生き方を考える上での助けになると筆者は主張します。

他の理論との関係性と筆者の方向性

同時期の有名な心理学の派閥であるフロイト主義は、神経症や精神病への治療からの発展という背景を持っており、欠乏や欠乏からの回復に着目しているという点で、着眼点に差異があり、筆者は健常人を対象とした心理学理論の重要性を指摘します。

私の見解では、このよな特定の立場に忠実である態度は、全く愚かなことというほかはない。われわれの課題は、これら多くの真実を全体的真理に統一することにあり、この全体的真理に対してのみ、われわれは忠実でなければならないのである

アブラハム・H・マスロー「完全なる人間」p6

ただ、筆者は人間性心理学のみに偏重しているわけではありません。筆者は一つの理論に固執することを否定し、欠乏に着目した理論やその派生派閥、その枠を超えた新規理論、更には老子のような東洋的な思想も含め、理論を統合的に形成する必要性を主張します。

私の見解では、このよな特定の立場に忠実である態度は、全く愚かなことというほかはない。われわれの課題は、これら多くの真実を全体的真理に統一することにあり、この全体的真理に対してのみ、われわれは忠実でなければならないのである

アブラハム・H・マスロー「完全なる人間」pⅪ

この方向性は本書の狙いにも強く反映されています。

本書の狙い・立ち位置・構成

心理学に求められるもの、本書の目標

マスロー氏は、時代の変化により求められる哲学も変化し、人々の可能性を最大化し理想の姿を実現するための、援助の哲学必要性が増していると主張します。

それまでの心理学は、神経病や精神病の治療という病的な人格を対象とした心理学が一般的で、援助の哲学参考になる知見は限られていました。

筆者が提唱した人間性心理学は健常な人格に起きる欠乏や欲求にも着目し、それらを乗り越えた満ち足りた状態の人間を追求する心理学であり、援助の哲学のニーズを満たす心理学でもあります。

この心理学の目標である満ち足りた状態の人間から、本書のタイトル「完全なる人間」は決められました。

筆者は自身の理論を軸として、それまでの心理学の知見実験論的な科学手法などを広く取り入れることで、全体的、単一的、包括的な心理学の体系の記述を目指しており、本書はその未来への懸け橋として誕生しました。

本書の立ち位置

マスロー氏は本書について、科学的な証明が不足している部分があることを認めており、より良い人生を実現するための結論ではなく未来に検討すべき仮説であると説明します。

この本には、前の本と同じように、試験研究、断片的証拠、個人の観察、理論的類推、まったくの予感にもとづいた主張が満ち溢れている。それらは大体、真偽を立証できるように述べられている。すなわち、仮説なのである。

アブラハム・H・マスロー「完全なる人間」pXIII

そのため、本書の内容をそのまま鵜呑みにするのではなく自分の考えに落とし込んで咀嚼したり、直近の研究結果と比較したりというステップが重要であると考えます。


筆者の主張は納得感が強いものが多く、科学的に立証されていない仮説でも、より良い人生や自分の価値観・方向性を考える上でのヒントや気づきをふんだんに得られるでしょう。

人工知能やブロックチェーンなどの技術の発展を始めとした急速な環境の変化で、人間の価値あるべき姿より良い人生とは何なのか、という問いの重要性が日々上がってきていると感じます。

本書は、現代強く求められる問いへの答えを考えるためのヒントがふんだんに詰まった、理論をまとめていくための筆者が後世に向けた向けたバトンだと捉えています。

本当に微力ではありますが、その問いを考える1人となりつつも、1人でも多くの人に本良書を伝えるというバトンの担い手の一人になれたらいいなと感じています。

本書の構成

本章の構成は下記の通りで、筆者の示す完全な人間を実現するために必要と考えられる要素への記述充実しており、筆者が多様な視点の統合を目指していることが読み取れます。

  • 第Ⅰ部 心理学領域の拡大
    • 第1章 緒言 健康の心理学
    • 第2章 心理学が実存主義者から学び得るもの
  • 第Ⅱ部 成長と動機
    • 第3章 欠乏動機と成長動機
    • 第4章 防衛と成長
    • 第5章 知ろうとする欲求と知ることのおそれ
  • 第Ⅲ部 成長と認識
    • 第6章 至高経験における生命の認識
  • 第7章 激しい同一性の経験第としての至高体験
  • 第8章 B認識の危険性
  • 第9章 概括されることに対する抵抗
  • 第Ⅳ部 創造性
    • 第10章 自己実現する人における創造性
  • 第Ⅴ部 価値
    • 第11章 心理学のデータと人間の価値
    • 第12章 価値、成長、健康
    • 第13章 環境を超えるものとしての健康
  • 第Ⅵ部 今後の課題
    • 第14章 成長と自己実現の心理学に関する基本命題

B心理学とD心理学

本書の特徴として“B心理学”, “D心理学”という表記が頻出します。


この表記の頻出が本書の読解の難易度を上げる一因かもと感じていますが笑

B心理学人間存在(生命)心理学の略語であり、ここでいう生命(Being)は、単なる生存ではなく、完全なる人間を達成した精神的本質存在を意味します。自己実現を目指しより良く生きるための心理学というイメージです。

一方でD心理学欠乏心理学の略語であり、低次欲求の欠乏や不足している点に焦点を当て、不足や欠乏によりどのような障害が起きるかを研究する心理学となります。フロイトの精神分析がこちらというイメージでしょうか。

心理学の統合を目指す筆者は両者に優劣をつけず、共に必要な心理学として議論を進めます。

高次欲求を目指す上では、低次欲求の欠乏が障壁となります。D心理学はB心理学に取り組む上での前段階となる欠乏の解消・解決を目的とした心理学といえるでしょう。

B心理学とD心理学の立ち位置に関する私のイメージ

終わりに

今回は筆者等の本書を読み進める上で重要な基本情報を整理しました。次回から早速内容に入っていきたいと思います。

より良い人生とは何か人生を充実させるために必要なものは何かという自分の考えをまとめる上でも貴重な機会と感じているので非常にワクワクしていますし、皆様にも読み応えのある記事と出来るよう頑張ります。

それではまた次の記事で!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA