マスロー「完全なる人間」を図を交えて整理してみる_13

どうもです!アブラハム・H・マスロー氏「完全なる人間-魂のめざすもの」をテーマとして、読書日記をまとめています。

第7回から第Ⅲ部「成長と認識」に入り、前回から第7章「激しい同一性の経験としての至高経験」に入りました。

前回、その定義を確認した至高経験の中で得られる同一性について下記のような様々な角度で検討します。

  1. 統合性
  2. 完全なる機能
  3. 自発性
  4. 独創性
  5. 世界からの自由
  6. 無我
  7. 完成
  8. ユーモア
  9. 感謝の念

これらはいずれも人生や日々の充実度に寄与する重要な要素と感じます。これらの要素に分けて同一性を検討することで、日々の活動をより満足度の高いものへ改善するためのヒントを得られるのではないかと期待しています。

それでは早速本題に入りましょう!

至高経験の中で得られる同一性

統合性

個の中の統合性

至高経験で見られる同一性の最初の要素として、筆者は精神の統一(合一、全体、一体)を紹介します。

K
K

これは同一性という言葉からイメージしやすい要素ですね!

この精神の統一において当人にみられるとされる傾向が下記です。

  • 自分に対して葛藤よりもむしろ平和な状態
  • 自己の経験と認識の間にズレが少ない
  • 部分機能が体制化され、集中・調和・効率的である

人格の分裂心理学的に治療の対象となる状態ですし、そこまでいかなくても己との葛藤がある状態では活動に集中することは難しくなります。

逆にこの葛藤が解消され精神が統一された状態では、潜在能力を活かした高いパフォーマンスを期待できるようになります。

自己を超越した統合性

さらに個の統一が進むと、世界をはじめとした自己以外の存在とも融合できるようになると筆者は主張します。

この融合の例としては時間を忘れて没入して取り組む創造者のイメージがしっくりくるでしょうか。そのほか一体感を持った母子の例が紹介されます。

没入や一体感といえば9回目で整理したB認識でも出てくるキーワードでしたね。筆者は統一感の最高境地は自我を超えて進むとし、無我の境地にまで入ると説明します。

無我による没入的観察(至高経験)により本質的な価値を認識可能に

そして自分を超えた一体感は瞑想における「宇宙との一体感」道教での「無為自然」いった到達点との共通点もみえることから、複数の偉人が重要視するポイントということができるでしょう。

完全なる機能

次に紹介される要素は完全なる機能です。これは至高経験において当人の能力が余すことなく最善かつ最高度に発揮される状態を指し、当人の主観のみでなく観察者からも確認されるものと紹介されます。

この状態はただ最大の能力が発揮されるのみでなく、労せずして容易に成果が得られるという特徴もあわせ持つと筆者は説明します。普段は苦労していたことも、至高経験においては難なくこなせることが報告されています。

他日努力し、緊張し、苦闘したことからも、その場合、なんの努力も、骨折りも、苦労もなしに「おのずと生じる」のである。それとともに、すべてのことが「ぴったり」と、あるいは「整然」と、あるいは「力いっぱい」におこなわれるとき、よどみなく、やすやすと、労せずして、完全にはたらく状態は、往々優美感や洗練された外観を呈するといっても過言ではないのである。

アブラハム・H・マスロー「完全なる人間」p135

能力の最大限の発揮とあわせて上記の特徴が得られるという点は以前本ブログで整理したフロー体験との類似点が確認できます。

フロー体験では高度な集中適切な難易度により、自分のするべきことが自然と把握できて高いパフォーマンスに繋がります。

フロー体験で普段の活動による楽しみと創造性を増す1/5:読書日記

この完全なる機能という要素を得るためには、フロー体験に関する研究が参考になるかもしれません。

自発性

次に紹介される要素は自発性です。筆者はこの特徴を下記のように紹介します。

かれは(中略)、根本的に運動の主体であり、自己決定者であると感ずる。自分は自制して、責任を完全にはたし、断固とした決意と、他の場合にみられないような「自由な意志」でもって、自己の運命を開拓していると感じるのである。(中略)かれはまるで自分の価値を疑っておらず、やろうと決めたことはなにごとによらず実行する能力をもっているかのようである。

アブラハム・H・マスロー「完全なる人間」p136

自由な意志による自主的な活動はそれだけで人生の充実度を高める印象があります。

やらなければいけないこと、やらされ仕事ばかりでは自分の時間・人生を過ごしているという実感が得られないでしょう。

実際、自分でどれだけ決められるかという裁量「コントロール感」がストレスの低減や健康の増強に繋がるという研究が報告されています。

  • コントロール感と仕事のストレスの関係:Meier, L. L., Semmer, N. K., Elfering, A., & Jacobshagen, N. (2008). The double meaning of control: Three-way interactions between internal resources, job control, and stressors at work. Journal of Occupational Health Psychology, 13(3), 244
  • コントロール感と活動・健康度の関係:Rodin, J., & Langer, E. J. (1977). Long-term effects of a control-relevant intervention with the institutionalized aged. Journal of personality and social psychology, 35(12), 897.

筆者は自発性を経験している当人が下記のような要素から解放されていることが主観的にも客観的にも観察されていると説明します。

本書p136の記載を元に作成 至高経験における自主性は様々な悪影響からの解放をもたらす

コントロール感の研究とあわせ、この自発性という要素は人生の健康度や幸福度に繋がると考えてよさそうです。

自発性の結果として下記のような特徴が観察されると筆者は主張します。

  • 表現に富んだ天真爛漫な振る舞い:悪意が無い、純朴、正直、率直、純真、飾り気無、開放的
  • 自然:単純、滑脱、敏活、素直、誠実、取り繕わない、素朴、実直
  • 自己の自由な表出:自動的、直情的、反射的、本能、天衣無縫、無自覚、虚心

周りからのしがらみや評価から解放されるため、自由で自然な発想個性や本来の能力の発揮が可能となり、次の要素の「独創性」に繋がります。

独創性

次は独創性で至高経験の中で最もイメージしやすい要素かもしれません。

自発性で前述の通り、至高経験の中では自由意志による活動が促進されます。筆者はこの独創性により当人は様々な場面で様々な立場から柔軟な方法を選択することが出来、無から創り出すような新規で斬新な創造が可能となると説明します。

周りからの指示や依頼によるもの、目的達成のための手段的な活動では、決められた基準や流行に従った評価に基づく選択となるため、独創的な要素は制限されてしまうでしょう。

至高経験におけるB認識におけるその認識自体を目的とする性質と同様、至高経験はその経験自体が目的となります。つまり外的動機ではなく、内的動機から導かれることも独創性を支える要素と考えられます。

至高経験における無為で自然で自由な表現により、独自性・個性・特異性が最大化することで、個人の違いがより際立ち独創性が生み出されます。

さてここまで、至高経験における同一性の要素について、下記4番目までを整理してきました。次の記事では引き続き残りの5要素について整理します。

  1. 統合性
  2. 完全なる機能
  3. 自発性
  4. 独創性
  5. 世界からの自由
  6. 無我
  7. 完成
  8. ユーモア
  9. 感謝の念

それではまた次の記事で!

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