日々の読書内容をまとめていく読書日記3回目です。
今回はハーバードビジネスレビューで取り上げたAI(人工知能)をもう少し勉強したいと考え、人工知能に関する本を扱っていきます!
入手した情報を知識として使えるまでに育てるためには、情報の深堀が大切ですよね。
現在テーマとしている人工知能について、知識を整理する上でためになると感じた本を紹介させていただます。
目次
今回の本
東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻の教授であり、日本ディープラーニング協会理事長も務められる松尾 豊氏の「人工知能は人間を超えるか-ディープラーニングのその先にあるもの」(株式会社KADOKAWA)を取り上げます。
日本トップクラスの人工知能研究者の一人である著者が、「多くの人に人工知能の現状を伝え、「正しく」人工知能に期待してもらえること」という思いを込めた本書は、AIとは何か、AI開発のこれまでの歴史、各段階で出来るようになったこと、これからの展望が一般人にも分かりやすく丁寧に紹介されています。
2015年に発行された本ですので、現在までのアップデート情報は自分で調べる必要があるのだけ注意が必要です。
概要
今回の本は下記の構成となっています。
序章、第1章:本書を読むための準備、人工知能の定義の整理
序章は人間を超え始めた人工知能の能力と直近の実用例を紹介しながら、本書の読み方が解説されています。
第1章は人工知能とは何かについて、専門家としての人工知能の定義を紹介しながら一般人が誤解しがちな点を整理しています。
AIの進化を4段階に分けて、各段階でできることをアルバイト、一般社員、課長、マネージャーと例えていたパートが非常に分かりやすかったです。
第2-5章:人工知能の研究と進化の歴史
特に第4章が機械学習、第5章がディープラーニングを取り扱っており、個人的に今回の肝となる章となります!
非常に丁寧に解説されている分、読み応えは十二分です。図や表もふんだんに使われているので、ここはじっくり読んで理解を深めていくことになると思います。
人によっては読むのに難しいと感じる方もいるかもしれません。私もここは読了に時間が掛かりました笑
第6章、最終章:今後の人工知能進化の展望、社会への影響と日本の課題
第6章はAIのこれからの展望という、将来の話につながります。
研究者と当時に、当時倫理委員長を務められた筆者の視点からの人工知能が社会にもたらすインパクトについて議論の紹介も非常に興味深かったです。
最終章は人工知能の社会への影響というテーマで、多くの人が気になるポイントが紹介されています。
多くの方が気にになる「人工知能は人間の仕事を奪うのか」という議論についても、筆者の考察が記載されており、どのようなスキルがこれから必要となるのかを考える上でも非常に参考になりました。
また、人工知能開発における日本の課題という、筆者の本書を書くに至った思いが込められたパートで締めくくりとなります。
読みたいと思った理由
前述の通り、ハーバードビジネスレビューを読んでいて、人工知能についての知識が不足していると感じたためです。
また、以前の記事1, 2, 3で触れた人工知能が進化した社会でどのようなスキルが重宝されるかという考察が正しいのかを確認したいという思いもありました。
大まかなイメージは合っていたかなと感じていますが、詳細なデータや解像度の高い考察で、考えが足りない点が多くあったと勉強になりました。
短期から中期的には、データ分析や人工知能の知識・スキルを身につけることは大変重要である。ところが、長期的に考えると、どうせそういった部分は人工知能がやるようになるから、人間しかできない大局的な判断をできるようになるか、あるいは、むしろ人間対人間の仕事に特化していった方がよい
人工知能は人間を超えるのか p232-233
期間に分けるという考え方が私の考察では不足していましたね。また、大局的な判断はこれまでのデータが限られるため人工知能には難しいという点も見落としていた点に気付けました!
読むのをオススメしたい方
大きく分けると「人工知能を教養として学び、今後必要となるスキルを知りたい方」と、「人工知能の活用をするため、これまでの背景や仕組みを理解したい方」におススメしたいです。
人工知能を教養として学び、今後必要となるスキルを知りたい方
ニュースで断片的な情報のみを聞いていると、体系的な知識が身に付きにくい分野であると思います。
その理由は人工知能という定義自体が曖昧である点に加え、筆者は下記の理由をあげています。
人工知能について報道されているニュースや出来事の中には、「本当にすごいこと」と「実はそんなにすごくないこと」が混ざっている。「すでに実現したこと」と「もうすぐ実現しそうなこと」と「実現しそうもないこと(夢物語)」もごっちゃになっている。さらには、人工知能の定義もさまざまなものが混ざっている。それは混乱のもとなのだ。
人工知能は人間を超えるのか p33
そのため、ニュースを聞いていても全体像の理解ができず、人工知能は理解できないSFのような遠い世界のものというイメージが付いてしまうのではないでしょうか。
すると、人は理解できないものに恐怖を感じるので、ますます人工知能を遠ざけ、勉強や調べるモチベーションが出ないという悪循環が起きてしまいます。
ただ、現実問題では人工知能は我々の世界や日常にドンドン進出してきており、影響を無視することはできません。
情報に取り残され、人工知能が脅威となる状態になる前に、正しい知識を身につけてその準備を進めることが、自分らしい人生を過ごす上で欠かせない要素となってきます。
その上で必要な基本情報を整理する上で、本書は大変有用な1冊となります。
この目的の方は、専門的な話が多くなる第4,5章が難しいと感じた場合は一旦読み飛ばし、より興味が深いであろう第6, 最終章を読んだ後に、時間を取って読み返した方が理解が進むかもしれません。
人工知能の活用をするため、これまでの背景や仕組みを理解したい方
正直、すでに人工知能の活用が身近な世界で働いている方や、開発を志している方は既に本書を読まれているか、知識をお持ちだと思います。
個人的に本書をおすすめしたいのは、人工知能の活用がまだされていない会社や業界で働かれている方です。
今後、人工知能の活用は広がっていきます。その中で、これまで人工知能の活用や議論が全くされていなかった業界や職種にも活用の範囲は広まっていくと考えられます。
そのような業界では、人工知能の知識を持っている方は少ないので、正しい知識を持っていることが大きな差別化となります。
開発まではハードルが高いですが、人工知能という単語にアレルギーを持たずに開発者と議論できるだけでも貴重な存在になれるでしょう。
また、変化を受けるのではなく、変化を作る側になれるので活躍の場を広げ、貴重な経験を積むことが期待できます。
本書では、進化により獲得する能力にあわせて6段階に分けて、今後の人工知能の発展の展望が紹介されているので、自身の業界や会社の動向と方針と比較することで、人工知能の活用のイメージを練りやすくなります!
読んで感じたポイント
一番勉強になったポイント
人工知能の進化とそれによって出来るようになったことを整理できたことです。
特に、機械学習とディープラーニングが異なるものであることを勉強出来ました。
また、チェスや将棋で活躍する人工知能や、クイズで優勝し画像診断としての医療への活用が
今後人工知能がどう進化していくか、どのように活用していくかを考え理解する上で重要な知識であったので、この機会に勉強を深めておいてよかったと思いました。
誤った知識のままの議論や考察ほど不毛なものはありませんからね・・・。
機械学習とディープラーニング
機械学習では、どのような変数(特徴量)を使用するかが予測の精度に重要であり、そこは人間が考えないといけないという課題がありました。
つまり、人工知能の予測の精度という性能は、どのデータが予測に必要であるかを考えるという人力の部分に依存していました。
それがディープラーニングという機能により、与えられた入力(データ)と出力(予測対象)を元に、自身で特徴量を求められるようになりました。
その特徴量を使用することで、人工知能が単独で概念を獲得することが可能となったのです。
概念という人間の頭の中にある抽象的なものを獲得とは、まさに人工「知能」に近づいてきたなと感じますね。
この進化を筆者は、ビックデータを人工知能が活用する上で最大の関門「特徴表現をどう獲得するか」を突破する抜け道ととらえており、その後の大きな社会的なインパクトも期待されています。
少なくとも、私の定義では、特徴量を学習する能力と、特徴量を使ったモデル獲得の能力が、人間よりきわめて高いコンピュータは実現可能であり、与えられた予測問題を人間よりもより正解に解くことができるはずである。それは人間から見ても、きわめて知的に映るはずだ。
人工知能は人間を超えるのか p174
今後も人工知能の研究の進捗や何ができるようになっているかの動向は要チェックです。
面白いと感じた点
面白いと感じた点は、人工知能の開発をする上で人間の理解も重要となる点です。
これはよく考えれば、人工知能は、人の知能を機械的に再現することを1つの目標としているため、当たり前のことかもしれませんが、本書を読むまで私はそのイメージが無かったので面白く感じました。
人がどのように情報を認識して判断しているのか、その判断のための知識や概念をどう記憶しているのかの研究も重要となりますし、人のようにコミュニケーションを取る人工知能の開発には心理学的な要素も必要となってきます。
認知や脳科学、心理学は個人的に関心の高い分野であったため、人工知能の研究をより身近なものに感じるきっかけとなりました。
また、最終章における、人工知能の今後の発展のパートで、人工知能の発展を生物の進化でいう「眼の誕生」と「脳の進化」と例えられる点も興味深いものでした。
進化という長い歴史における成功要因が、人工知能という最新技術の動向予測にも役に立つということは、歴史や過去を学ぶ上でのモチベーションとなるとともに、学習時の視点や考察点の提供になるのではないでしょうか。
人工知能は人間を支配するのか
また、一般人の間で議論されやすい人工知能は人間を支配するのかというテーマについては、一刀両断している点も印象的でした。
私の意見では、人工知能が人類を征服したり、人工知能を作り出したりという可能性は、現時点ではない。夢物語である。:p203
「人間=知能+生命」であるからだ。知能をつくることができたとしても、生命をつくることは非常に難しい。(中略)生命の話を抜きにして、人工知能が勝手に意思を持ち始めるかも危惧するのは滑稽である。:p204
人工知能は人間を超えるのか p203-204
私は正直まだこのパートがかみ砕けていません。人間と生命についての勉強が不足していると感じたので、他領域の勉強も進めていつか理解できるようになりたいです!
行動に取り入れるなら?
人工知能で達成が難しいスキルの習得を目指す
人工知能の発展を本書を参考に予想し、人工知能に仕事を奪われないための準備を始めることが可能です。
本書の内容を元に、以前の記事で触れたEQ( 心の知能指数 )や、人間らしさとは何かという深堀が重要となるでしょう。
これらのスキルは人工知能が発達した世界では、原点回帰で需要が高まり、価値が高くなることが予想されます。
しかし、一朝一夕で身に付くものではなく、日々の経験の中で少しずつ磨いていくものとなるため、粘り強い取り組みが必要となります。
しかしその反面、この期間が長く内容が濃いほど、他の人に真似できない価値の高いスキルとなるでしょう。
人工知能の活用を目指す
人工知能と競争するのではなく、活用する側に回るのも1つのアプローチでしょう。筆者は下記のような思いを本書に込めています。
読者のみなさんには、それぞれの仕事や生活の中で、人工知能をどのように活かしていけばよいか、活かすことができるのか、ぜひ考えてみてほしい。人工知能によって、この社会がどうよくなるのか、どうすれば日本が輝きを取り戻せるのか、考えてほしい。そして、人工知能の現状と可能性を正しく理解した上でぜひ人工知能を活用してほしい。
人工知能は人間を超えるのか p255
人工知能を適切に活用するためには、下記のような問いかけが必要となるでしょう。
- 自分の仕事でビックデータを活用するなら?
- 自分の会社にビックデータを活用するなら?
- それにより何が達成できる?
- それは現在の仕事、会社の方針、強みに沿っているか?
- そのためにはどのようなデータとデータを収集する仕組みが必要?
これらの問いかけを考える上で本書で紹介されていたような今の人工知能に何ができて、今後の進化により何ができるようになるのかを正しく理解することが重要になります。
業界と人工知能の双方について、最新情報や将来の展望の継続的な追跡も大事になりますね。
最後に
この2つのアプローチは必ずも、二者択一である必要は無いという点に注意が必要です。
現在の置かれた状況や個人の価値観で優先度をつけることは重要ですが、同時に二つのアプローチをすることは可能です。
むしろ両者を考え比較することで、人工知能と人間のそれぞれの可能性の理解がより深まるという効果も期待できるでしょう!
本書をきっかけに最新技術を恐怖ではなく、チャンスととらえて活用していく人材が増えていくことを祈りながら、私もそちら側の人間になれるように精進を進めていきます!