どうもです!そろそろ今年も年末が近づいてきましたね。
皆様はどのような一年だったでしょうか?また、残りの1か月で取り組みたいことはありますでしょうか?
私は今年はタイムマネジメントを主なテーマとして勉強しており、どのような過ごし方が自分にとって好ましいかを整理出来た一年でした。
次のテーマとしては傾聴や共感といったコミュニケーションスキルの強化をあげています。
集団で生きる生き物である人間として、コミュニケーションスキルも最も汎用性の高い能力の1つです。
今回取り上げるのは聴くことに特化したケイト・マーフィ氏の「LISTEN」(監訳:篠田真貴子氏、訳:松丸さとみ氏、日経BP)です。
昨今の文化はいかに上手にしゃべるかに関する様々なトレーニングや理論が開発され、SNS等の発信のツールも発達し、何を伝えるかに注目しがちです。
筆者は本書で聴くことの重要性を強調しながら、「聴く」力が失われつつある現状に警鐘を鳴らします。
筆者は聴くことの重要性を下記の通り主張します。
私たちは聴くことでしか、人として関わり、理解し、つながりあい、共感し、成長できません。聴くことは、プライベートであれ、仕事であれ、政治的なものであれ、どのような状況においても、人間関係がうまくいくための土台をなすものです。
ケイト・マーフィ LISTEN p27
一番最初の節のタイトルである「誰とでも話ができる」は「誰の話でも聞ける」ということには個人的にハッとさせられました。
私は人と話すことに苦手意識があり、話が続かなくなったらどうしようとか、嫌われたどうしようとかいろいろ考えてしまうのですが、相手が楽しそうに話をし続けてくれている時はそのような不安は感じません。
これまで人と話す前は「何を話そうか」に着目して臨んでいましたが、視点を変え、相手から「何を聴くか」に着目して人と接することでコミュニケーションの充実化を期待できるかもしれません。
時代の傾向的に失われつつあるスキルなのであれば、そのスキルの希少価値も高くなるはずです!
それでは本の情報に入っていきましょう!
本書について
筆者
ケイト・マーフィ氏はヒューストンを拠点に活動するジャーナリストです。扱うトピックは健康、テクノロジー、科学、デザイン、アート、航空、ビジネス、金融、ファッション、グルメ、旅行、不動産など幅広く多岐にわたります。
ジャーナリストの仕事としてインタビューは欠かせませんが、インタビューの相手も分野のみでなく、ノーベル賞受賞者からホームレスの子供までと多様です。
多分野の多様な人びとから話を引き出しヒット記事を生み出す筆者は、まさにプロの聴き手といえます。
本書について
そしてそんな筆者が、自身の至らない点も含め、聴くスキルを伸ばすための指南書として執筆したのが本書となります。
筆者の経験論のみでなく、聴くことに関する学術的な研究の調査と、過去にインタビューした優れた洞察を持つ人と筆者と同様に聴くことのプロへのインタビューも統合された莫大な知見が集約された500pを超えたバイブルとなっています。
相手の話を集中して聴くことは、仕事や作業におけるコミュニケーションを円滑化したり、仕事や家庭の会話をより温かみのある時間にしたりする実用的な側面に加え、幅広い人からの学びを得られたり、人間関係を強固なものとするという長期的な効果ももたらします。
しかし、「誰かの話を本気で聞く」という素質は多くの人に忘れられ、もしくは存在すらも認知されていないため、鍛える機会を中々持てません。
会話は人間が生きていく上で必須の活動となりますし、学びや人間関係も人生を充実化させる上で重要な要素となります。
そんな重要な会話という活動の半分以上を占め、人生の充実化にもつながる「聴く力」を鍛えることを目的とした本書は、全ての人にとって学びのある一冊となるでしょう。
本書の構成
本書は18ものChapterで構成される大作となっています。
- Chapter1:「聞くこと」は忘れられている
- Chapter2:私たちは、きちんと話を聞いてもらえた経験が少ない
- Chapter3:聞くことが人生をおもしろくし、自分自身もおもしろい人物にする
- Chapter4:親しい人との仲もレッテルからも「聞くこと」が守ってくれる
- Chapter5:「空気が読めない」とはそもそも何が起こっているのか
- Chapter6:「会話」には我慢という技術がいる
- Chapter7:反対意見を聞くことは「相手の言うことを聞かなければならない」ことではない
- Chapter8:ビッグヒットは消費者の声を「聴く」ことから生まれる
- Chapter9:チームワークは話をコントロールしたいという思いを手放したところにやってくる
- Chapter10:話にだまされる人、だまされない人
- Chapter11:他人とする会話は、自分の内なる声に影響する
- Chapter12:「アドバイスをしよう」と思って聞くと失敗する
- Chapter13:騒音は孤独のはじまり
- Chapter14:スマートフォンに依存させればさせるほど、企業は儲かる
- Chapter15:「間」をいとわない人は、より多くの情報を引き出す
- Chapter16:人間関係を破綻させるもっとも多い原因は相手の話を聞かないこと
- Chapter17:だれの話を「聴く」かは自分で決められる
- Chapter18:「聴くこと」は学ぶこと
聴かないことによる弊害、聴くことによる恩恵、それを支持するエピソードや研究結果、相手の話を聴くための注意点などがChapter毎にまとまっているため、テーマの内容を深堀して理解しやすかったです。また、文章も平易で翻訳も自然であったので、500pを超えますが、非常に読みやすいという印象を受けました。
本書を読む上で注意が必要と感じた点
聴くことの重要性と効果を説明する割合が多い
Chapterから見て感じる方もいるかもしれませんが、聴くことの重要性やその効果を主張する箇所が多いです。
そのため、テクニックを手短に学ぼうとしている人は少し肩透かしを食らうかもしれなません。。
聴く上で重要なのは小手先のテクニックではなく、相手や関心に集中して話を引き出そうという姿勢となります。
筆者は相づちやオウム返しをなどの巷で推奨される「聞いているフリ」をするテクニックは、「聴くこと」にならないと主張します。
相手やその話に好奇心を本当に持っているならば、聴いているフリはそもそも不要です。
好奇心を持って話を聞くからこそ、相手の発言や思考整理を促す良い質問が生まれ、相手も自分の話を聴いてもらえているという安心感のもとで話を進めることが出来ます。
聴く力を高めるには表面的な振る舞いではなく、自分の関心や集中力の向ける先をコントロールするという本質的な変化が必要となります。
本質的な変化を生むためには、なぜ「聴く力」が必要なのかに強い納得感を持って、自分の関心や集中力のコントロールを変えようとする強い動機が芽生えることが大きな第一歩となります。
手短に表面的な満足感を与える本ではなく、本質的な聴く力を鍛えるための最善の形として、このような構成にたどり着いたと推測します。
どのように行動に取り入れるか自分で整理する必要がある
また、聴く上での注意点はマニュアルや箇条書きのような形式で整理されていないので、自分の行動に取り入れる点は何かを意識して読むことが重要と感じます。
聴くという作業自体が相手に集中してその場に合わせて展開していくものなので、マニュアル化自体が不適と考えています。
行動に取り入れる意識が無いと、折角読み終わっても「聴くことの重要性はよくわかった!」という感想だけで終わってしまい、自分の行動の改善まで繋がらない可能性も懸念されます。
聴く上での注意点などの行動に取り入れるべきエッセンスは具体的なエピソードやもたらされる効果とあわせて、本書内に散りばめられているので、自分の行動を改善するべきのアイディアを具体的に考えられているかに注意しながら読むことを推奨します。
ただ、ここでも自分の願望による曲解に注意し、筆者の主張を正確に読み取るという傾聴的な読書が重要となるでしょう。
エッセンスのみを効率よく抽出したいという焦りが出る人ほど、本書をじっくり読むことで得られる恩恵は大きいと考えます。
読んだ感想
最も重要と感じた点:傾聴の姿勢に必要なものとは?
人とつながっていても解消されない孤独
筆者は多忙な現代社会では自分の話を聴いてくれる存在もはや貴重であると主張します。
時短や効率化が叫ばれ、スマフォを活用したマルチタスクに溢れたり、映画でさえ倍速されたりする昨今では、じっくり人の話を聴く時間自体が珍しくなっていると指摘します。
誰かの話が30秒以上かかろうものなら、みんなうつむいてしまいます。話を聞いて深く考えているのではなく、テキスト・メッセージを読んだり、スポーツの結果を見たり、オンラインで何がトレンド入りしているかを確認しているのです。誰かの話に耳を傾ける能力は、あらゆる人(とりわけ自分と反対意見の人や、要点を早く言ってくれない人)を締め出す能力に取って変わってしましました。
ケイト・マーフィ LISTEN p41
人と交流があっても話を聴いてもらえないと人は孤独を感じます。
人とつながっているつもりでも実は孤独な状況に陥っている可能性があるのです。Ted talkでも関連する動画があったので紹介しますね!
孤独は肥満とアルコール依存症による早死のリスクの合計とほぼ同じくらいの早死リスクを持ち、気持ちの上のみでなく身体的にも悪影響があることが報告されています。
この孤独を解消するには、相手の話に耳を傾け相互理解を深め、強固な繋がりを作ることが必要となります。
しかし、人間の特性上人の話を聞くというのは想像以上に難しく、上記のように現代社会では相手の話に耳を傾ける時間を持つことも難しくなっているため、この孤独という問題を中々解決できないというのが実情です。
それでは、相手の話に耳を傾けるのに必要な資質とは何でしょうか。個人的に特に重要と感じたものをピックアップします。
相手の話を受け入れる純粋さ
相手の話に耳を傾ける上で鍵となるのは、相手の話を受け入れる純粋さです。
人間は皆それぞれ異なる方法で物事を見ています。認識のレンズの違いにより、同じことを話しているつもりでも実は違うことを話していたという事態が生まれます。
ここに相手の話がこうであったらいいなという願望があるとバイアスや決めつけが生まれ、その認識は更にずれていきます。
相手の話を都合よく解釈してしまい失敗したという経験をお持ちの方は少なくないと思います。
例えば、人には相手は自分と同じ考えを持っていてほしい、アドバイスを送りたい、周りから良く思われたいといった願望が生まれがちです。
そのような願望は、結論ありきで思い込みで会話を進めたり、話をコントロールしようとしたりして、相手の話をゆがめて受け取る原因となります。
例えば、優秀な人のイメージとして、1を聴いて10を知るというのがありますが、途中で相手の話を知ったつもりで遮ってしまうと本当に大事な情報の共有が漏れてしまう危険性があります。
また、人は物事を自分の都合のいいように解釈しようとする傾向があるため、無意識の内に相手の話を異なるように解釈したり、都合の悪い部分を切り捨ててしまったりもします。
このような状況では、会話はそれぞれの願望を自己勝手に叶えるための手段となり、話のすれ違いを生み続けるため、自分の話を聞いてもらえないことによる孤独感は解消されません。
このようなバイアスや思い込みが生まれやすい人間の特性や傾向を把握し、自分は本当に相手の話をそのまま受け入れられているかに日ごろから注意を払うことが「聴く力」を鍛えるためには重要となります。
相手に対する好奇心
人間の特性が生み出す問題を打破し、相手の話をそのまま受け入れたり、多くの人と関係を構築する上で重要となるのは好奇心であると筆者は主張します。
好奇心が無い状態での相手を値踏みするような表面的な質問はもはや尋問であると筆者は指摘します。
好奇心があるからこそ相手をよく知ろうと、相手の関心に沿った質問と熱心に聞く姿勢が生まれ、自然と会話が展開していきます。
これは相手自身を知ることが目的となるコミュニケーションとなるため、自己勝手な手段のためのコミュニケーションと異なり、敬意や尊重が生まれ相手にも伝わるため、強固な信頼関係に繋がります。
一方で、人は恐怖への防衛システムとして確実性を好む性質があり、非確実性が高いその場での反応が求められる会話、特に知らない人との会話を避ける傾向があるため、意識しないと会話に関する好奇心を維持することは難しく、話を聞く機会自体も失われていってしまいます。
そうなると聴くことによる恩恵を感じる機会も無くなるので、不確実性を持つ会話をますます遠ざけてしまいます。
不確実性の無い会話には恐怖が少ないかもしれませんが、新たな発見や刺激もありません。日ごろの会話が変化の無い退屈でつまらないものに陥り、会話・聴くことへの興味と共に相手への好奇心も失われてしまいます。
不安が無い一方で、変化や刺激の無い毒にも薬もならない会話という殻に閉じこもってしまします。
しかし逆説的ではありますが、生きた実感をいちばん味わわせてくれるのは不確実性です。(中略)リスクを伴う経験も同じです。感覚が研ぎ澄まされ、より多くに気づきます。ドーパミンと呼ばれる、気分をよくする脳内化学物質が放出されるおかげで、予定通りの人と会うより偶然の出会いの方に大きな喜びを感じます。
ケイト・マーフィ LISTEN p108-109
好奇心を養うには、本書を通して「聴くこと」の力や恩恵、重要性を整理し、不確実性のある会話こそが人生に充実感をもたらすことを認識することが第一歩となるでしょう。
「聴くこと」の恩恵を実感できれば、周囲の人への関心の高まりも期待できます。
また、相手への思い込みや先入観を捨てて、自分が知らないことを認め、関わる全ての人から学びを得ようという謙虚な姿勢が、相手への関心を高め好奇心を育てる上で重要となります。
相手の感情に対する集中力
聴くことの核心は何が相手にとって重要であるかを読みとることと筆者は主張します。相手の話を引き出すためには、相手にとって大事な話は何なのかに着目し、発言の元にある相手の感情を読みとる必要があります。
しかし、相手の感情がそのまま言葉にならない場合も往々にしてあります。これは遠慮や本人自身も自分の感情に気付けていないこともあるためです。
相手の関心が何なのか、何を聴いて欲しいのかを読みとるためには、「この人はなぜこの話を私にしてくれるのか」を自問しながら感情の機微を示す声色や仕草にも着目する必要があります。
この感情の機微を示す兆候を見逃さずに、相手の関心や感情を読みとるためには、集中力が非常に重要な鍵となります。
相手への集中力が無ければ、相手の話を引き出すことは出来ません。しかし、会話に集中するには様々な障壁が存在します。
相手の話を聞く上で人が集中力を欠く理由の一つに、次に何を言おうかと考える思考があると筆者は主張します。
人の思考は話すスピードよりも速いため、空いた余裕でどのようなことを言えば自分のセンス、存在感を示せるのかを考えがちであると筆者は指摘します。
この状況は相手の話を聞いているようで、意識は自分に向いています。つまり相手の話への集中力が欠けている状態といえます。
会話をしているようでお互いの発言の一方通行の連続となり、深堀や思考の融合による相互理解やアイディアの誕生といった対話や議論に期待される効果が失われてしまいます。
このような障壁に注意し、自分の注意と集中が相手の話自体に向いているか、先回りして余計なことを考えていないかという、セルフモニタリングも相手の話を聴くスキルとして重要となります。
また、集中力を維持できる環境を用意することも重要となります。
携帯やパソコンなどのマルチタスクを迫るデバイスは遠ざけ、特に重要な会話の時は、周囲の騒音などが無い静かな部屋を選択して十分な時間を確保することも集中を維持するための有用な手段となります。
電話だと情報量削減のために、声色等の微妙な感情の機微を示すシグナルがカットされてしまうということも印象的でした。
また、集中はエネルギーを要する作業なので、適度な休憩やメリハリをつけることで、集中できるように自分の心身を調整することも重要だと個人的に感じました。
面白いと感じた点:他人とする会話は自分の内なる声にも影響する
内なる声とは
個人的に最も面白いと感じた点はChapter11の「他人とする会話は自分の内なる声にも影響する」です。
私たちは頭の中に内なる声を持っています。心の中で常にひとりごとを話しており、その対象は日常のことから重大になりそうなことまで様々です。
認識しやすそうな例として、考え事をしている時や何かを決めようという時の脳内会議があがられると思います。
興味深いのは自分のひとりごとは、他人の話を聴くときと同じ脳の部位を使うことであり、ひとりごとは自分の中の他者の声ということもできます。
内なる声は現実の行動に影響を与える
内なる声は人によって傾向が異なります。自分に否定的な声を掛けるか、前向きな声を掛けるか、もしくはそもそも内なる声自体があまり生まれないなどの違いが観察されています。
参考として、どのようなコミュニケーション環境で育ったかが、内なる声の形成に影響を与えることも報告されています。(低所得層で生まれネグレクトを受けた子どもの内なる声の発達について:論文1、論文2)
内なる声が重要な点はただの脳内会話に留まらず物事の認識や実際の行動にも影響を与える点です。
例えば、内なる声が自分を強く否定する場合と前向きな声を掛ける場合では、物事や他者のとらえ方が大きく異なります。
この両者では自分への肯定感や挑戦への積極性に差が生まれ、行動の選択そして最終的には成果にも変化が生まれるでしょう。
自分の内なる声を把握する重要性
筆者は認識や行動に影響を与える内なる声を把握する重要性を主張します。
あなたの内なる声は、状況によって変わりますか?親しげですか?批判的ですか?
こうしたことを自問するのは、とても重要です。というのも、内なる声は、あなたが物事をどう思案するか、状況をどう解釈するか、道徳的な判断をどう下すか、問題をどう解釈するかに影響するからです。
ケイト・マーフィ LISTEN p290-291
自分の内なる声を認識することで、認識、思考や判断に無意識に悪影響を起こしている自分の無意識の傾向に気付くことができ、認識を自分で論理的に再構築して好ましい方向へ軌道修正することが可能となります。
一方で、人は自分の内なる声を認識するのに抵抗を示すことも報告されています。人は問題解決思考を持つため、自分の内なる声は現在抱える問題点に対する内容になりがちです。
解決すべき問題を考えるのはストレスがかかるため目を逸らしたくなり、自分の内なる声ごと無意識に封印しようという衝動が生まれます。
その結果、自分の内なる声と向き合う時間を持てなくなり、多くの人は自分の内なる声を認識できないまま過ごすことになります。
自分の声を認識できなければ、悪影響を及ぼす原因の特定ができなくなるため、対処や軌道修正も出来なくなり、自分の内なる声に無抵抗に振り回されることとなります。
人の話を聴く習慣は自分との対話の改善にも役立つ
それでは、自分の内なる声を知るためにはどのような方法が挙げられるでしょうか?
自分の内なる声を把握し、好ましい方向に捉え直す専門的な方法として認知行動療法が挙げられます。
内なる声の語り方を後ろ向きで否定的な悪影響をもたらす存在から、親切でオープンな考え方を提案してくれるセラピストのような声に置き換えることで、Wellbeing(身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること)の感覚が促進されることが報告されています。
ただ、認知行動療法は直ぐに日常に取り入れられる手段ではありません。
日常の中で取り入れられる手段として、様々な人の話を聴くことで視野を広げながら、自分への問いかけを上達させることを筆者は提案します。
さまざまな人の話に耳を傾けることも、また役に立ちます。多くの声は、多くの視点をもたらします。人に質問して相手の答えを吟味すれば、自分との対話でも、自分に問いかけることが上達していきます。どんなにむずかしい問題であっても、それを解決する、もしくは少なくとも折り合いをつける唯一の方法は、結局のところ自分との対話しかありません。
ケイト・マーフィ LISTEN p293-294
他者に耳を傾けることが、コミュニケーションのみでなく、自分との対話や自己理解にも有用であるという点が非常に興味深かったです。
行動に取り入れたいポイント:自己認識力を高める
感情は認識に影響を与える
相手の話を聴いて認識する上で、自分の感情が影響力を持っています。同じ話を聴いていても感情により受け取り方が変わります。
相手の話に集中できない、そのまま素直に話を受け止められない時は、自分の感情が妨害している可能性があります。
例えば話を聴く上で問題となるのは下記のような行動ですが、その行動の裏には()内に記載した原因から生まれる感情が隠れていると推測できます。
- 発言(特に批判的な内容)の妨げ、情報の遮断、決めつけ(自己防衛、自信の無さ)
- 表面的で脈絡の無い質問(相手の関心を無視、好奇心の低下)
- 自分の話(自己顕示欲、自信の無さ)
特に恐怖と不安は人の話を聴く上で悪影響をもたらしがちです。
自信が無く恐怖や不安を抱えている人は、不確実性をより嫌うため話をコントロールしようとしがちです。
不安や恐怖により闘争・逃走反応が刺激されると、自己防衛のための即時の判断をする回路が強くなるため、相手の話を決めつけで判断しようとしてしまいます。
他者から否定・攻撃されるのではないかという恐怖に怯え、反射的に防御反応を示してしまうのです。
防御反応として、話を妨げ自分の決めつけにより会話を進めようとしてしまいます。自分をどう防衛するかに無意識に固執してしまい、相手の発言に集中する余裕を持てません。
このような状況では、周囲の人は発言しづらくなり、発言しても素直に受け取れなくなるため、助言や知見を得られる貴重な学びの機会は失われてしまいます。
会話における恐怖は、太古のジャングルで猛獣と出くわした時に即時に逃走して生き延びるためのシステムを、平和になった現代社会でも呼びおこしてしまうのです。
人間の思考や行動に対する感情の働きについては下記の記事でも整理したので、興味ある方は是非ご参照ください!
「感情とは何か?」を考えてみる:読書日記感情は自分の聴く姿勢に気付くシグナルともなる
こう記載すると感情は厄介な存在ともいえますが、捉えようによっては前向きな見方も可能です。
自分がいまどんな感情をいだいているかに目を向けることで、修正すべき自分の聴く姿勢に気付き判断するためのシグナルともなります。
また、聴く上でまずい対応をしてしまった時、その背景にどのような感情があるのかに注意を向けると、問題の行動を修正しやすくなります。
実体験で記載すると、後輩からの質問を遮ってしまったことがあり、その原因は質問された内容への勉強不足による不安であると気づきました。
また、先輩だから質問に完璧に答えなければならないという誤った自己へのプレッシャーもあったと思います。
その後は、分からないことは分からないと認めるというクッションを挟むことで、お互いに学びとなる議論を深めることができるようになりました。
全部に応えなくてはいけないという先入観を捨てることで、相手の考えを聴いたり、自分の考えを述べる余裕が生まれたのです。
自分の中の先入観を捨てることは決めつけを回避し、相手の話に集中する上で重要となります。その先入観の存在に気付く上でも感情は大事なシグナルとなります。
自分の弱さや無知の部分を正しく認識することで、批判的なアドバイスも素直に受け入れることができ、学びの機会を広げることができます。
前述のように他者の話に耳を傾けることが自分との対話の改善に繋がり、また、自分との対話で自分を知ることが他者の話に耳を傾けるスキルの成長につながるのです。
自分との対話と他者との会話の改善はお互いに好影響を与えるという点が、本書を通して学びとなった点であり、最も行動に取り入れたいなと感じた点です。
終わりに
以上、ケイト・マーフィ氏の「LISTEN」(監訳:篠田真貴子氏、訳:松丸さとみ氏、日経BP)の読書日記でした。
人の話を聴くというのは生きていく上で欠かせない行動となりますが、本書を読むことでこれまでの人生で疎かにしていた部分が多いなという気づきが得られました。
何に意識を向けるかを少し変えるだけで、相手が話しやすい環境を整えることができ、その結果、興味深く学びにもなる話を教えてもらえたり、人間関係を深めたりすることが期待できます。さらに、他者の話に耳を傾けることは自分との対話の改善にも繋がります。
人と話している時にいったい自分は何に集中しているか、相手の話を素直に受け止めているかに注意し、貴重な学びの機会を見逃さずに活かしながら人生の充実に繋げていきたいと感じました。
それではまた次の記事で!