ダイヤモンド社のHarvard Business Review(HBR) 9月号 についてのレビュー中編です。前回はAIについての定義や特徴を整理してみました。
今回は本題の人が自分の活躍の場所を確保するためにどのような準備が必要となるかを考えていきましょう!
AIが苦手なことと人間に求められる能力
何のために働くのかを考える
AIは答えを見つけることが得意です。先述したチェスのように、答え(相手のキングを取ること)が明確な時は、その目的のために持ち前のスピードを活かして最適解を考え続けることが出来ます。
しかし、この何が正解かについて自分で考えだす能力は現状ありません。何が正解かというゴールについては人間が設定する必要があります。
また、このチェスというゲーム自体を作り出す能力は乏しいのも現状です。
流行しているゲームの要素とそれが人間の感情にどう影響を与えるかというデータを与えることで、新しいゲームを作り出すということは可能かもしれません。
しかし、チェスの競技用のAIが新しいゲームを自分たちで作り出すことはありませんし、どのような影響を与えられれば良いのかという正解も人間が考えて設計する必要があります。
与えられたルールの下で、一定のゴールが与えられた状況では強いAIも、その目的やルールを考える上では人間の力が必要とされます。
人に求められるスキル1:問題発掘能力
それでは、上記を踏まえて人に求められるスキルを考えてみましょう!
まずは現実と理想のギャップから解決すべき問題を考える問題発掘能力が考えられます。
問題解決能力の限界
少し前までは問題を解決する能力が高く評価されていました。仕事の上での問題を解決する力、これはどの仕事でも求められる能力として分かりやすかったためです。
また、世界も発展の段階であり、需要や不足しているものが明確であり、解決するべき問題があふれていたこともその傾向を強めていたと考えられます。
しかし、現在は科学やテクノロジーの発展により、分かりやすい問題は解決されており、分かりやすい問題が少なくなってきました。
人種問題、人権問題、環境問題等解決すべき問題自体は山積みですが、どれも個々の問題解決能力でどうにかなるものではありません。
AIの台頭、求められる問題発掘能力
また、AIの台頭がこの傾向に拍車をかけます。AIは人間に対して問題解決能力に優れているため、問題解決能力の価値は更に下がっている状態となります。
依然としてどの仕事場でも役に立つ能力ですが、それだけでは十分ではなくなっているのが現状です。
そのため、問題を解決するのではなく、そもそも何が解決すべき問題なのかを考えるという、AIとの差別化を生む力の価値が高まっています。
それも、プロジェクトの中での問題を見つけるというマクロなものではなく、プロジェクト自体を生み出すようなマクロな命題を考える力が必要とされています。
問題を新しく設定することで、何をするべきかを決めることができ、新しい価値を創造することが出来ます。
理想の姿や世界を考えて、自分が、所属する組織が、社会が、人間が、何をするべきかを考え、問題を見つける能力が強く求められる世界となっていくでしょう。
人の価値観とは、自分たちが考えている以上にもろいものだと思います。だからこそ、ウェルビーイングとは何か、正義とは何かを考え続けること、そして本当に大切だと思う価値観を問い続けることが重要なのではないでしょうか。
北川 拓也氏、
データとAIの力でウェルビーイングな社会を実現する , Harvard Business Review9月号
人に求められるスキル2:目的を考える、AIの力を引き出す
AIをライバルではなくパートナーへ
また、AIに仕事を奪われるという側面だけではなく、AIにより生まれる需要を考えることも大切です。
AIをライバルと考え、敵対心を燃やすのではなく、パートナーとして上手く付き合う方法を考えるのです。
目的が正しいかを判断する力はAIにはないため、それを活かすかは人間の活用能力に依存します。
どれだけAIが適切な回答を出しても、元々の問題設定や使用場所が間違っていれば、その答えは使えないものとなってしまいます。
米ガートナーの調査によると、AIの試作品が実際の製品につながった事例は53%しかなかったという。AIプロジェクトを立ち上げるのも一苦労であるにもかかわらず、それを成功させるのはさらに難しいのが現状だ。
“Gartner Identifies the Top Strategic Technology Trends for 2021”, Gartner October 19, 2020.
AIを小売・流通の現場に実装する方法記事内参照論文, Harvard Business Review9月号
どのような問題を解決する必要があり、その選択肢としてAIが適切であるかを考える能力が必要となります。
この能力があれば、AIの活用が広がれば広がるほど、自分の価値を高めることが可能となります。
そのためにも、積極的に情報を収集し、AIに何が出来るかというポテンシャルを正しく理解していくことも重要となります。
AI技術が今後も進化するのは確実で、20年も経てば良くも悪くも相当な影響力を持つことが予想されます。大事なのはAIを活用してどのような社会を作っていきたいのか、人類はAIが何を最大化するようにAIを設計するのか、ということです。
北川 拓也氏、
データとAIの力でウェルビーイングな社会を実現する , Harvard Business Review9月号
まとめ
世界の変化を調べることで、どんなスキルが必要になるか予想して準備することができます。
もちろん、変化のスピードが加速している中で、未来を完全に予想することはできませんが、傾向であればある程度予想することができ、傾向が分かれば対策することも可能です。
今回紹介した2つのスキルは一朝一夕で身に付くスキルではありません。
継続して取り組むことで自分のマインドやスタンスとして、習慣へ身につけていく必要があります。
だからこそ、AIの活用がまだ限定的な今の段階から準備を進めておくことが大切です。
今回はAIについての記事となりましたが、変化への対応は他の分野でも重要と感じています。
自分の関心が薄い分野、もしくは現在の自分と直接関係しない分野の情報に触れられるという観点で、定期的に新しい情報を自分の関心に関係なく効率よく提供してくれる情報ツールを持っていくことは大切ですね。
私は正直、自分の周囲ではAIの採用がまだ限定的であるため、情報を調べてこなかったという反省があり、今回の記事はその姿勢を改善することも目的としております。
今回も機械学習という面を中心に考えているので、AIが新しい進化をしていないか、現在の対策で問題ないかという定期的な情報収集と分析が必要となりますね。
次回もAIの苦手な点をみながら、他にどんなスキルが求められるかを考えていこうと思います!