時間に関する価値観を見直し、人生の生き方を考える:読書日記

季節は変わり過ごしやすい気候になりましたね。毎年秋は短くなっているので、この心地よい空気を余すことなく満喫したいと思う今日この頃です。シルバーウィークも近づいておりますが、皆様ご予定はいかがでしょうか?

さて今回の読書日記ですが、最近時間の使い方について考えることが多いので、「時間の超基本」(朝日新聞出版)という本を手にとってみました。

宇宙物理学者二間瀬智史氏タイムコーディネーター吉武麻子氏という珍しい組み合わせが監修する一冊で、時間について知り、「自分の時間についての価値観を見つめなおす」ことを促す一冊です。

時間の使い方を考える機会が増えたのですが、時間について知らないことが多いので視野を広げたいと考えていました。

自分の固定概念に囚われずに、情報のインプットを継続し、自分の価値観を磨くことが重要であり、自分の人生を大きく左右する時間の使い方に関する価値観を磨く重要性より高いと感じています。

そんな中、時間とは何かについて考えるヒントを得られそうな本書が魅力的に映りました。

それでは本題に入りましょう!

本書について

監修者

監修者は宇宙物理学者二間瀬智史氏タイムコーディネーター吉武麻子氏です。

二間瀬智史氏

二間瀬智史氏京都産業大学理学部宇宙物理・気象学科教授東北大学名誉教授を務めており、専門は一般相対性理論宇宙論が専門となります。

その専門性が活かされ、他書とは異なる視点で物理学を交えた時間に関する知識を得ることが出来ます。

時間とは何かを考えることで、時間に関する自身の固定概念を解除し、より俯瞰した視点で時間を見つめ直すきっかけとなります。

物理学と聞くと難しく感じますが、各項目が1,2ページで簡潔にまとまりビジュアルもふんだんに使用されているので、理解の難易度はそれほど高くないと感じました。


ただ、続けて一度に読むのは少ししんどかったので、読むのに詰まったら、他の章と往ったり来たりしながら、気分転換しながら読むのが個人的にお勧めです。

吉武麻子氏

もう一人の監修者はTIME COORDINATOR株式会社代表取締役を務める吉武麻子氏です。

仕事に追われる中で、妊娠・出産というライフイベントと葛藤した過去や、世界のワーキングマザーと仕事をした経験より、オリジナルの時間体質改善プログラムを考案。時間の効率活用により目標実現を目指す人へ、時間管理・目標達成・モチベーション管理など、コンサルティングサービスを提供されています。

そのコンサルティングでのノウハウによるものか、生活のスタイルにあわせた多様なテクニック時間に関する振り返りのコツが本書では丁寧に紹介されています。

そのため、読者が自分のライフスタイルに合わせて採用するテクニック重視する振り返りのポイント選択しやすい、多くの方にオススメ出来る構成となっています。

本書の構成

本書は下記の通り、4つの章を中心に構成されます。

  • はじめに:この本の使い方、時間との上手な付き合い方等
  • Chapter1 時間の秘密
  • Chapter2 仕事と時間術
  • Chapter3 生活と時間の話
  • Chapter4 人生と時間
  • もっと知りたい!時間のこと:時間を表す表現や、慣用句、時間に関する明言の紹介

Chapter1では、物理的観点から時間の基本的な知識が紹介されます。Chapter2,3では最も実用的な「仕事」「生活」における時間術の章となります。Chapter4では、理想の生き方を実現するため時間の付き合い方のヒントが紹介されます。

本書の狙いと特徴

時間の使い方の重要性は以前より叫ばれており、多くの効率化や時間術が紹介されてきましたが、本書の狙いはそこではありません。読者に、時間について知り「自分の時間についての価値観を見つめなおす」ためのヒントを提供することを目的とする一冊です。

本書でも記載のある通り、変化が激しく生き方や価値観が多様化した現代では、これまでの小手先のテクニックの積み重ねのみによる時間の使い方の改善に限界が見えてきました。その限界を打破するため、時間に関する価値観を磨く重要性をテーマにする書籍が増えてきた印象です。

以前に取り扱った「時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」」でも、単純な効率化ではなく、いかに自分の大事なものに集中的に時間を使い自分の人生を取り戻すことがメインテーマでした。

本書では、時間との付き合い方を見直すためのヒントが上記の章に分けて紹介されています。

実用的なChapter2,3のみを取り上げる本が多い印象ですが、本書の特徴は、Chapter1とChapter4の存在でしょう。

Chapter1は、基本的な知識を生物学・哲学のみでなく、物理学という視点を交えて学ぶことで、時間が不思議で貴重な存在であることを再認識するきっかけとなります。

Chapter4は、視点を未来に向けて、人生という長期的な視点で時間を考えるパートになります。「時間を有効活用して何をしたいのか?」「今現在重要なことに時間を割けているのか?」という、時間というテーマから「生き方」を見直す切り口やヒントが紹介されます。

本書で学んだ点:優先順位付けの目安とバランスよく時間を配分するコツ

重要度と緊急度のマトリックス

時間配分を考える上で自分の活動の優先順位付けが重要となります。優先順位付けで最も有名な考え方が重要度と緊急度のマトリックスです。

このマトリックスは本書でも紹介されますが、自分のタスクを下記の通り重要度と緊急度により分類して優先順位付けします。

重要度・緊急度マトリックス 「時間の超基本」p62を元に吹き出しを追加して作成

①重要度かつ緊急性が高い仕事は、言うまでもなく優先順位付けを高くする必要があります。自然と取り組まれるタスクとなるため、差が付きにくい領域と言えるでしょう。

一方で、②重要度が高いが緊急度が低い項目は、期限等は無いものの将来の利益や成長をもたらすタスクとなります。短期的な視点では期限が無いため後回しにしがちですが、長期的な視点大きな恩恵を生み出す領域になります。


「生命科学的思考」(高橋 祥子氏)」でも提唱された視野の切り替えがここでも重要となりますね。

②の領域にどれだけ時間を注げるかにより人生の過ごし方が大きく変わるため、最も改善しがいがある領域といえるでしょう。

③重要度が低く緊急度が高い項目にも注意が必要です。期限が近いため、スケジューリングの上でこの領域に着目しがちです。また、この領域の仕事は必要なエネルギーが少なく手を付けやすいという特徴もあります。

そのため、気づけばスケジュールがこの領域の仕事に占領され、重要な仕事に手が付けられない事態に陥りがちです。③の仕事で占領された日々は時間に追われ充実度も下がりがちです。

この領域をできるだけ削り、重要な仕事に集中が高まる時間をどれだけ配分できるかが重要となります。

優先順位付けの基準に配分バランスを取り入れる

重要度・緊急度マトリックスまではよく紹介される有名な枠組みですが、知っていても実際の行動に具体的に取り入れられなかったり意識し過ぎてバランスが崩れてしまったり意外と実践が難しいという印象です。

その原因はどれくらいの配分でタスクをこなすかの目安の設定が難しくなんとなくの意識のみで終わってしまったり調整する基準が無いまま実践してしまうことが考えられます。

本書では優先順位付けをよりバランスよく設定するために、「3:3:4」という基準を提唱します。

時間を「今やるべきことの時間」「人と関わる時間」「未来のための時間」に分け、それぞれの時間を3:3:4と配分することで、現在と未来のバランスを取りながら時間を最適化できます。

さらに重要度・緊急度により各項目毎に優先順位付けすることで、何に取り組めばいいかを明確化できます。

「3:3:4」の割合でバランスよく優先順位をつける  「時間の超基本」p81,82を元に作成

この時間のバランスは時間をスケジューリングする上での基準として、非常に勉強になりました。

時間の種類分けにより優先順位付けがより合理的になり、また、基準の設定により自分の時間の使い方の評価をしやすくなります。

緊急度を重視し過ぎると今やるべきことに時間を追われることになる一方、未来ばかりを見ていては今やるべきことを見落とし、地に足のつかない夢想の日々を過ごす危険性があります。

自分の時間の目的を考慮し、現在と未来の両方にバランスよく時間を配分する必要があります。

また、自分の時間の効率性のみに固執すると時間の使い方が利己的になり、気付いたら周囲から孤立する事態を招きかねません。

人間は社会の中で生きるように進化してきた生き物で、孤立による精神的な悪影響は強いため、人と関わる時間を疎かにすると、人生の充実から遠ざかる可能性が高くなります。

また、時間の種類により、優先すべき重要度・緊急度が異なるのもポイントですね。

例えば、重要度も緊急度も低い雑談ですが、メリハリをつければ人間関係構築に役立つアプローチとなるため、全てカットすればいいというものではありません。

過ごす時間の目的により重視すべきポイントは異なり行動の優先順位を正しくつけることで、大事なものを見落とす危機を回避できます。

バランスよく時間を配分するコツ

さらに本書では、自分を5つの役割に分けそれぞれでこの配分を検討することで、公私や大切な人との時間のバランスを取りながら時間の掛け方を考えることを提案しています。

優先順位付けをした際に、どの程度の配分すればいいかという目安と、自分の活動にバランスよく時間を使うコツを知りたかったので、非常に勉強になるポイントでした。

面白いと感じた点:効率よりも大切なこと

効率化や時短の罠

本書で面白いと感じたポイントはすべての行動に効率化を求めることが善ではないと注意喚起している点です。

時間の効率化や時短のみにこだわりすぎると、自分に取って本当に重要なことを見落とす危険性があります。

自分の好きなことや、大切な人と過ごす時間、時間を掛けてこそ価値が出る活動でも効率化に囚われてしまうと、ただタスクをこなすだけで充実感が得られず空虚感に苦しむことになりかねません。

また、効率化により折角時間が空いても、やることがなかったり、その空いた時間に新たなタスクを詰め込んでしまうと、努力による効率化が人生の満足感に繋がらない事態が発生します。

活動によっては効率を忘れてじっくり時間をかけることで、充実感やリラックスを得られる一時を過ごすことも重要になります。

効率化に向いていない活動の例

効率化に向いていないじっくり時間を掛けるべき活動としては、人との関わりやクリエイティブなものとして下記が例示されます。

  • 人の育成:相手の理解度や感情をくみ取り、状況に合わせた対応が必要
  • アイデアの創出:新たなものを生み出す時は、むしろ時間を掛けるべき
  • 人間関係の構築:喜びや学びが得られる心の通った交流のためには、時間の短縮は大敵
  • 子育て:便利グッズの助けは借りてもいいが、子どもと過ごす時間の短縮や関わりの効率化はすべきではない

これらは一概にどれだけの時間が必要か見積もりも出来ないため時間の調整が難しく、むしろ、時間を掛けたほうが良い活動である点に注意が必要です。短い時間で成果を出すのは難しいでしょう。

効率化を考える時はこれらの活動を除外して、対象を検討する必要があります。

効率を忘れて過ごす心身のリセットのための時間

前述の通り、効率ばかりに気を取られる時間に追われる感覚ストレス苛まれ続けることになります。

燃え尽きのような状態を回避し健康な状態を維持するためには、消耗から解放され、心身をリセットするための時間を持つことも重要です。

心身のリセットに繋がる効率を考えずに過ごせる時間を、本書では下記の通り整理します。

  • 趣味の時間その瞬間の楽しみに集中。習得を焦ったり、競争心が無い方が豊かな時間を過ごせる。
  • 没頭する時間物事に真剣に打ち込む時間。「ゾーン」の状態に入ると、心が落ちつき強い幸福感を覚える。
  • リラックス時間:自然の中に身を置いたり、美味しいものを食べたり、時間を忘れ心が安らぐ一時。

上記のような心身をリフレッシュするための時間自分のスケジュールに十分に組み込まれているかの確認も重要となります。

確かに趣味の時間では、楽しみ過ぎて時間を忘れる時最も充実感を得られそうですね。時間や効率ばかりを気にしていたら趣味から得られる楽しみは薄れてしまいます。

また、「ゾーン」とは過去読書日記でも取り扱った「フロー体験」とも言い換えられます。フロー体験は活動により達成される結果ではなく、活動の過程で得られる楽しみや創造性の発揮が目的となる体験(参考:フロー体験に関する過去記事)を指します。

時間の意識のし過ぎは、「フロー体験」を起こす上で集中を妨害する障壁となります。

そして、人生にはリラックスして心身を回復させる時間も重要です。自分を取り戻す時間の重要性とは「Quiet-内向型人間の時代」(過去記事:本書の概要&内向型と外向型本書で学んだ点)でも学びましたね。

どの活動が効率化に向いていないのかについて整理をしたことがなかったので、本書での例示は非常に勉強になりました。

効率化すべきでない活動まで、時間を気にしてその本来の恩恵を失っていないか注意していこうと思います。

行動に移したいポイント

時間についての問いを自問してみる

本書には時間に関する多くの問いが出てきます。この問いが、自分の時間に関する価値観を見直すきっかけとなります。重要度が高いと感じた質問は下記です!

  • 「時間とはそもそも何なのか?」
  • 「時間が足りないとはどのような状況なのか?」
  • 「自分自身を満たすタイムスケジュールとは?」
  • 「時間に支配されない人生とは?」
  • 「どんな人生を送ると後悔するか?」
  • 「人生をどう生きたいか?」

本書を読み進めながら上記を自問することで、時間についての価値観の振り返りと見直しにつながります。

時間の使い方について考えることは、すなわち、人生の生き方を考えることです。

時間の使い方その際の感情を振り返ることで、自分にとってどのような時間の過ごし方が価値が高いのかを把握できますし、自分が人生で何を達成したいかという長期的な目標に気付くきっかけともなります。

逆に自分にとって大事なものが何か分かれば、充実感を増やすために時間を有効活用するためのヒントともなります。

もし上記の中で考えたことが無い問いがあったり、上手く回答できない問いがある方は、本書をきっかけに新しい発見を得られる可能性が高いので、本書を強くオススメします。

時間の使い方を改善し人生の充実につなげるためには、「時間」と「自分」と向き合い自分の時間に関する価値観を見直し洗練することが重要となります。

「時間の過ごし方を考える」ということは「人生の生き方を考える」ということ

周囲の友人との意見の交換

また、時間についての問いを友人や家族と共有してみることも、本書は推奨しています。意見を交換することで、自分一人では思いつかなかった時間の新たな側面が見つかるかもしれません。


私は9月に哲学的な話をしてみようと約束している友人がいるので、そこで時間についての価値観を共有してみる予定です。

時間の使い方の好みを共有することで、今まで知らないお互いの新たな一面価値観を知るきっかけともなるため、関係の強化に繋がり、その結果、共有の時間自体大切な時間の過ごし方となりそうですね!

以上、「時間の超基本」(朝日新聞出版)の読書日記でした。

最近時間について考えさせられる本を色々読んできたので、自分なりの時間に関する考えを一旦まとめてみるのも面白いと思いました。

一度自分の中で思考を整理すると、今後の読書をより深堀して楽しめると期待しています!

時間の使い方について普段あまり考える時間が無い方考えるための切り口が中々思いつかない方は、考える時間と振り返るきっかけを生む本書がオススメです。

それではまた次の記事で!

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